人工股関節材料として一般に用いられているコバルトクロム(CoCr)合金は,表面の不動態被膜が耐食性を支えている.その不動態膜は,骨頭と頚部のテーパー結合部分では,金属同士の接触面におけるフレッティングと呼ばれる微小振幅の摩擦により損傷しやすいと考えられている.不動態被膜の損傷,その後に続く再形成に対して,摩擦ストロークの違いはどのように影響しているかを明らかにするため,本研究では,CoCr合金同士の往復動摩擦実験において,電気化学計測を行った.その結果,摩擦に伴う腐食電位の低下は,ストロークが短いほど,損傷度が大きい傾向があり,また,損傷の回復が遅い傾向があることがわかった.
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