研究課題/領域番号 |
26420094
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村上 敬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 主任研究員 (40344098)
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研究分担者 |
廣瀬 伸吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 製造技術研究部門, 主任研究員 (10357874)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トライボロジー / セラミックス / 環境材料 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
平成26年度に行ったXPSによる摩耗痕表面分析において、形成されている可能性の高いH3BO3が蒸気圧の関係でうまく検出されなかった件について、H3BO3の蒸発しにくい大気中でラマン分光法を用いた分析を行い、AlB12、SiB6両方の摩耗痕表面に微量のH3BO3の存在を確認することができた。H3BO3の検出量がかなり小さかった原因としては、水中での摩擦試験中水中に溶けだしてしまったこと、及び元々AlB12、SiB6共に水とほとんど反応しない特性を持っていたためであると考えられる。さらに微量のH3BO3形成で安定した低摩擦・低摩耗現象が得られた原因としては、AlB12、SiB6共に非常に硬質で摩耗しにくく、薄いH3BO3層がダメージを受けにくかったためと考えられる。また、AlB12、SiB6共に非常に硬質ではあるものの、破壊靭性値は通常のセラミック程度であるため、放電プラズマ焼結法を用いて靭性向上を目的に靭性のある金属間化合物NiAlをバインダーとしたサーメット作製を試み、その結果、緻密なAlB12-NiAl系サーメットの作製に成功することができた。 また本年度は、RFスパッタリングを用いてAlB12膜のコーティングに取り組んだ。表面SEM観察によって、AlB膜が形成されていることがSEM-EDXで確認することができた。しかしながら、X線回折結果からAlB12の回折ピークが確認できず、所望の材料の成膜は実現できなかった。また、数μmから20 μmのサイズで表面のところどころに結晶核が形成されており、このEDX分析によるとB、N、Oの組成を有しており、Al元素が含まれていないことがわかった。成膜条件を変えてもこうした結晶核の自己形成がなされており、均質なAlB12膜の形成には至らなかった。このためコーティングについては、大気プラズマ溶射等他のコーティング法も含めて検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラマン分光法による分析により、AlB12、SiB6の低摩擦機構解明が進み、かつコーティング技術ではやや遅れが見られたものの、高靭性のAlB12-NiAl系サーメットの作製方法を見つけることができ、応用方法に幅を持たせることが可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
若干進展に遅れのあるコーティング技術を中心に行い、かつAlB12やSiB6の他のホウ化物で低摩擦・低摩耗の期待できるものについての測定・分析を行う予定である。 コーティングについては、RFスパッタリングでの成膜条件の最適化を進めて、均一で平坦なAlB12膜の形成を目指す。また、大気プラズマ溶射など他のコーティング法も活用して、AlB12膜作製の可能性を検証し、低摩擦・低摩耗を満足するセラミックコーティング膜作製を実現する。これらの結果を用いて、最終的により低摩擦・低摩耗でコーティングやサーメットなど応用方法に富むホウ化物材料の開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初RFイオンプレーティンング法で行っていたホウ化物のコーティングに若干遅れが見られ、別のコーティング法も同時並行で試す必要が生じた。ただし他のコーティング法の検討に手間取り、大気プラズマ溶射法などの方法に決定したものの、平成28年度にずれ込む見込みとなったために、平成28年度そのための予算確保が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
AlB12やSiB6の大気プラズマ溶射外注費や溶射のための粉末材料費などに用いる予定である。
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