ガスタービンの高効率化を達成するためはタービン入口温度(TIT)の上昇が必要となるが、同時に高圧タービン部の熱負荷増加を招く。したがってタービン翼の冷却技術は系全体の高効率化に対し必須となるが,熱負荷の増大に対して優れた遮熱効果を持つフィルム冷却技術の適用は不可欠である。フィルム冷却については、CRVPと呼ばれる渦対が冷却空気の被冷却領域への付着性を著しく低下させるが、Funazakiらが開発した流れ制御デバイス(DFCD:Double Flow Control Device)はCRVPの抑制に有効であることが前年度までの研究で示されている。しかし、実機環境を模擬した高密度比条件下におけるDFCDの性能はこれまで明らかにされていなかった。そこで平成28年度の研究においてはCO2を冷却空気として用いることで高密度比条件における実験的調査を可能とし、同時にin-houseで高精度な感圧塗料計測の開発を行い,これらの実験環境下で同条件下におけるフィルム冷却に対するDFCDの性能評価を行った。さらには、三次元形状の流れ制御デバイス(Double Flow Control Devices: DFCD) を冷却孔上流に設置することにより、フィルム冷却における流れ場を制御しフィルム冷却性能を向上させることを可能とした。さらに、主に低吹き出し比条件下におけるDFCDの形状最適化が取り組まれてきたが、実機では高吹き出し比を作動条件とする冷却孔も多く存在することから、平成28年度の研究では実験及びCFDベースのタグチメソッドを用いて高吹き出し比条件下におけるDFCDの最適形状導出に取り組み、従来にない高性能でロバストな制御デバイスの開発に成功した。
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