本研究では,高い粘性を持つ粘弾性流体中に設置された1μL程度の気泡について,数百Hz程度の圧力振動場における気泡界面近傍の特異な流動構造の解明を目指す.微粒子の移動を追跡することと,2次元偏光イメージング計測を用いて気泡近傍の遅延分布(流動複屈折を利用した2次元主応力分布,配向分布)を取得することにより,圧力振動場での気泡近傍の流れ構造を明らかにする. 石英光学セル内に0.03 M臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)と0.23 Mサリチル酸ナトリウム(NaSal)の混合水溶液を満たし,4μLの単一気泡を設置し,100Hzの圧力振動を気泡下部から印加した.遅延分布図と流動可視化画像より,気泡が膨張する時には気泡近傍流体が二軸伸張変形をしたことがわかった.一方,収縮時においては,気泡下部に鉛直方向に対称軸を持つ強い遅延が見られた.そこで,トレーサーを用いた気泡近傍の流動可視化画像より,気泡収縮時には,気泡収縮に伴う上下方向の一軸伸張変形が圧力振動を与える側に存在し,その伸張速度は気泡界面に近づくにつれ,急激に増加したことが明らかになった.流動構造の検討から,気泡下部でNegative wakeの存在が示唆された.また,セル内部に2個の気泡を鉛直方向に設置した場合についても同様な検討を行ない,上側に位置する気泡によるその気泡下部に生じた一軸伸張変形が,下側に位置する気泡の上昇速度の促進に関与することがわかった. 水平流路から上下方向に分岐するY字型分岐流路に連続的に試料流体を流した系に気泡(サブミリバブル)を導入し,圧力振動を印加した場合において,2次元偏光計測による遅延分布と気泡周辺に存在する可視化用微細気泡の挙動を整理し,気泡近傍流体の変形様式について考察した.気泡から見て圧力振動を与える側に,気泡収縮時にだけ,Negative wakeが生じることが明らかになった.
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