研究およびその成果の概要は以下の通りである。1.衝撃波と微小な渦との干渉。衝撃波とコルモゴロフ長程度の大きさの渦と衝撃波との干渉を気体論方程式(BGK方程式)および圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式を用いて数値解析した。圧縮性ナヴィエ・ストークスの計算では本研究で開発する高次精度スキームのたたき台である二次精度衝撃波捕獲スキームを用いた。渦は解像するが衝撃波の厚みよりはるかに大きい解像度の格子であっても衝撃波捕獲スキームの結果は、気体論方程式の高解像度の数値解と衝撃波近傍を除いてよく一致することが確認された。2.高次精度衝撃波捕獲スキームの開発。高次精度の衝撃波捕獲スキームではWENO再構成法が使われるが、局所的に保存量を特性変数に変換する必要があり、計算の効率が悪い。本研究では簡単な高次再構成法を開発し、これより強い衝撃波の計算の際に頻繁に生じるカーバンクル現象に強い耐性を持ち、滑らかな領域では5次精度を達成し、計算コストがWENOスキームの半分という高精度高効率な衝撃波捕獲スキームを開発した。3.円柱を過ぎる極超音速流による空力加熱に対するフィルム冷却。淀み点からジェットを噴射して衝撃波背後の高温気流から機体を防御するフィルム冷却の問題を1で用いた衝撃波捕獲スキームで数値解析した。ジェットのマッハ数が増加するにつれ、ケルヴィン・ヘルムホルツ不安定が顕著になるものの、冷却効率は増加し、マッハ数が0.1程度でほぼ完全に冷却できることが明らかにされた。しかしジェットのマッハ数が0.4を超えるとジェットのはためきが生じて冷却効率はかえって低下する。比較的小規模の3次元計算ではケルヴィン・ヘルムホルツ不安定は2次元性を保ち、乱流遷移は確認されなかった。今後、2で開発された高次精度衝撃波捕獲スキームを用いた本格的な3次元計算を計画している。
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