ロケットエンジンでは、ターボポンプインデューサで生じるキャビテーションが原因となって流量変動が生じる場合がある。圧力変動や流量変動に対するキャビティ体積の変化率、すなわち動特性がその発生に大きな影響を持つため、これを明らかにすることが、信頼性の高いロケットエンジン(ターボポンプ-推進薬供給系)の実現のために必要とされている。 平成28年度の研究では、基本的なキャビテーションの動特性を明らかにすることを目的として、単独翼(平板翼、Clark Y11.7%翼、NACA0015翼)に生じる翼面キャビテーションの動特性の計測と数値シミュレーションに取り組んだ。 試験部の上下流の配管を矩形管に変更することで、計測精度の向上を図った上で、動特性の計測を実施した。いずれの翼においても、圧力変動や迎え角変動(動翼の流量変動に相当)に対するキャビティ体積変動の位相は、概ね-30°~10°の範囲であったことから、圧力変動や迎え角変動に対して、キャビティが大きな位相遅れなく応答することがわかった。クラウドキャビティの放出が頻繁なNACA0015翼の場合には、6~8Hzの場合に限り、-50°~-40°と比較的大きい位相遅れが生じた。 動特性の大きさは、翼面キャビテーションの体積が小さくなる、平板翼、NACA0015翼、Clark Y11.7%翼の順に減少することがわかった。また、動特性の大きさは、加振周波数に対して、それぞれの翼でおおよそ一定であった。 数値シミュレーションでは、動特性の大きさが過小評価され、また加振周波数に対する位相の応答の詳細を捉えられないが、位相の範囲を概ね予測可能であることがわかった。
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