研究課題/領域番号 |
26420113
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村川 英樹 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40467668)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パルスドップラ法 / 二周期法 / 流量計測 / 超音波 |
研究実績の概要 |
超音波パルスドップラ法における計測速度限界拡張手法として、異なる送波周期で交互に超音波パルスの送受信を行う二周期法を用い、速度分布計測を実施した。その結果、計測可能な最大速度を拡張するにつれて、S/Nの低下により速度分布の計測精度が低下した。そこで、パルスドップラ法の解析に一般的に用いられる手法(自己相関法)によって速度を算出し、速度の折り返し回数を二周期法によって予測する補正手法を導入した計測システムを構築した。その結果、二周期法に比べて大幅に計測精度の向上を実現することができたが、二周期法による精度が大幅に悪い条件では、折り返し数の予測精度が低下し、得られた速度分布の一部に誤差が含まれることが分かった。そこで、二周期法による速度分布に移動平均を導入することを新たに提案し、計測アルゴリズムへの導入を行った。 予備実験として、既存のアクリル製水平ダクトにおいて速度分布計測を実施し、レーザドップラ流速計による速度分布計測と比較することで、本手法によって計測精度が向上することを確認した。さらに流量測定への適用性を確認するため、産業技術総合研究所の水流量校正設備を用いた実験を実施した。配管径200mmの水平円管流路において、流量:80m3/h~500m3/h、速度分布のサンプリング時間を280msと設定して計測した。その結果、速度が速い条件ほど測定体積を大きくする必要があることが分かった。これは反射体が測定体積を通過する時間とパルス送波間隔に関係し、計測する速度に対して必要とされる最低の測定体積存在することを示した。測定体積を適切に設定することで、従来手法において同条件で計測可能な流量の約6倍の流量である500m3/hの条件で、誤差1%以下で流量評価が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、二周期法を応用した速度拡張アルゴリズムの構築および計測システムの構築を実施し、試験流路における適用性の検証を行うことを予定していた。それに対し、予定していた計測システムの構築が完成し、試験流路での精度確認が順調にできたため、2年目以降に予定していた実機適用性の検討に関しても、予定を早めて実施可能となり、本システムの有効性についての検証が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに導入したパルスドップラ法における速度拡張手法では、高速流になるほど測定体積を大きくする必要があることが分かった。そのため、壁面近傍では計測誤差が大きくなるため、測定体積の可変による精度向上手法の導入について検討する。これには、複数の超音波素子を同心円状に配置したマルチウェイブ超音波センサが有効であると考えられるため、導入を行う。更に医療用では一般的なMTF(Moving target filter)を導入することで、管壁で生じる定在波を低減し、計測精度向上を図る。二周期法は低S/N条件において精度が大幅に低下したことから、スペクトル解析による計測精度向上アルゴリズムの構築を実施する。 引き続き実機適用性の検証を行うため、産業技術総合研究所所有の高レイノルズ数大型実験流路を用いて、流量計測を実施する。この際、反射体の多少、測定体積の影響、および壁面近傍における精度について主に着目する。偏流の生じる条件において伝播時間差式超音波流量計と比較し、本手法の有効性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現有の超音波センサでの計測が可能であったため、購入を予定していた超音波センサについて購入する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実機適用性を初年度に前倒しで実施できたことから、研究成果の発表が見込まれており、それに伴う旅費および引き続き産総研における実験を実施するための旅費として、研究費の使用が見込まれる。超音波センサは消耗品であるため、必要に応じて購入する予定である。
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