既存の流量計では適用困難な流れ場における配管流量計測への適用性について検討し,既存の伝搬時間差式(TOF)超音波流量計の適用性向上を実現するため,TOFと流速分布式によるハイブリッド式超音波流量計のシステムを構築した。システムは,送受信に用いるセンサと受信用のセンサ,パルサレシーバ,高速デジタイザおよびPCによって構成されている。構築したシステムでは,一方向から超音波パルスを送信し,そのパルスを反対側に設置した受信用センサで受信するとともに,送信したセンサによってもエコー信号を受信する。それにより,伝搬超音波による伝搬時間差と,エコー法による速度分布計測を同時に実現可能とした。このシステムを用いて, 90度ベンド部が設置された配管を想定し,配管内に邪魔板を挿入した配管径200mmの水平円管流路において、流量:80m3/h~320m3/hの条件において流量計測を実施した。 伝搬時間と速度分布の同時計測により,測定線上の線平均流速の時間変化が,超音波の伝搬時間と比例していることを実験的に確認し,同時計測を行うことで非定常流においてもハイブリッド式流量計によって,TOFの校正が可能であることを示した。さらに非軸対象流においても,計測線の数による流量算出誤差について評価した結果,三つの測定線で速度分布を計測することで,偏流のある条件においても誤差0.5%で計測可能であることを示した。更に,偏流においても高精度に流量計測が可能である速度分布式の特徴を生かし,速度分布式によって流量計測を行い,その結果を用いて伝搬時間と流量との変換係数(PF)を決定する手法について検討した。その結果,速度分布式において三測定線でPFを決定することで,常時においては偏流の生じる条件においても,一測定線によるTOF計測でも誤差1%以下で流量計測が可能であることを示した。
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