研究課題/領域番号 |
26420114
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
尾形 陽一 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10323792)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 噴霧後流渦 |
研究実績の概要 |
直噴ガソリンエンジンを模擬した大気圧下の燃料噴霧と空気流動の相互作用を,高速度ビデオカメラを用いて噴射ノズル近傍から遠方まで複数の位置及び様々な時刻に撮影された水平・垂直断面画像解析を行い,水平・垂直方向噴霧先端到達距離の横風流速・噴射圧依存性を見出した.垂直距離の時間発展は噴射圧の増加に伴い増加するが,横風流速の増加に伴い減少する.水平距離は時間に比例し,噴射圧の増加に伴い微粒化が促進され横風の影響を受け易くなり減少する.これら本研究の可視化計測結果から,横風噴霧外縁の発達挙動を表す関数の新しい予測式を見出した. 噴霧水平断面PIV画像より,ノズル近傍では噴霧主流部から剥離する後流の渦度分布は千鳥配置状に生成されたカルマン渦との類似性が見られるが,渦構造からアンサンブル平均波長及び時間変動を求め,変動周波数はレイノルズ数≒O(1000)における円柱後方カルマン渦のストローハル数St≒0.2とほぼ一致することが分かった.また,ノズル遠方の水平断面PIV画像から,渦に起因する水平速度成分の空間的変動において横風流速より速い領域の存在も見られた. 自由噴霧に対し横風噴霧は下流に流されることから従来の噴霧角と併せて,水平・垂直断面画像を用い横風下流側からの投影噴霧角を新しく定義した.投影噴霧角は時間と共に増大するが,横風中では静止気流中に対し投影噴霧角が大きく,より三次元的に拡がる様子が得られた.LDSAによるザウタ平均粒径分布測定から横風上流側は大きく,下流側は小さい粒径分布が存在し,横風の分級効果を明らかにした.本内容はエンジン筒内における横風噴霧挙動の性質,及び混合時間・距離スケール等の基礎的知見として重要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一様な横風と相互作用する燃料噴霧の可視化・粒径分布計測を通じて,横風噴霧挙動及びその後流渦構造の詳細なデータ及び物理的考察が得られたことから,平均粒径分布などのミクロ的性質と噴霧の先端到達距離・噴霧角・投影噴霧角などのマクロ的性質との関連性に対する基礎的知見が得ることが出来た. 基礎的な先行評価を進める為に商用ソフトも用いているが,我々の研究グループでの先行研究において可視化計測で見られた,噴霧後流に現れる微粒化液滴分布の空洞(または数密度が小さい希薄)領域まで再現する為には十分な空間解像度だけでなく,横風噴霧発達過程時における一次・二次分裂,液滴衝突モデリングの考察及び検証が必要な段階であることから,独自コードの開発は次年度への継続段階である.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に続き数値解析コード・モデリングの改善を進め,高次精度手法に基づくオイラー的アプローチにより,解像度が不十分であった噴霧の三次元的な詳細構造を大規模並列計算によって明らかにし,実験結果との比較検証を進める.もしくは流体解析において有用性・汎用性が注目されているOpenFOAM・KIVA等の使用も検討する. また,可視化計測・数値解析結果から,横風噴霧挙動を特徴づける支配的な微粒化モードをPOD解析を用いて抽出し,特に支配的と考えられる低次元モードの物理的意味を噴霧内・噴霧後流に生じる渦構造から定量的に評価する.並行して渦構造の特性混合長さも抽出し,噴霧液滴と雰囲気混合における横風の効果を定量的に評価することで混合促進条件を検証する. 平成26年度は垂直方向噴霧先端到達距離・噴霧液滴速度・平均粒径の実験条件として横風流速,噴射圧での評価を行ったが,条件数を更に増やしレイノルズ数,ウェーバー数等の無次元数に対する微粒化モードのマッピング作成,及び噴射期間・燃料(物性値)依存性の評価も進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上していたワークステーション・実験用部品経費がそれぞれ低減出来たこと,並びに導入予定であったソフトを次年度の新しいVersionで導入する方が効果的と判断したため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の計画である大規模数値解析を進める際,膨大なサイズのデータを処理するために高速かつ大容量のメモリを搭載するデータ解析専用マシン,及び解析ソフトが必要となることから,次年度使用額を用いて導入する.
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