研究実績の概要 |
本研究は,周囲の温度変化に応じて発光強度が変化する発光分子(ポルフィリン誘導体)を自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer, SAM)法によりガラス基板上に化学吸着させることで,極めて均一な感温発光薄膜センサを作製し,微細流路内の温度分布を高い空間分解能でイメージング計測することを目的とするものである.平成28年度は,X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, XPS)を用いて発光分子の表面吸着状態を分析するとともに,蛍光顕微鏡を用いて微小領域 (691 μm x 518 μm)内の温度分布計測を実施した.XPSによる分析結果から,発光色素の保護基に含まれるフッ素元素の信号強度(F1s)が他の元素の信号(例えば,N1s)と比べて十分に小さいことから,発光分子は当初想定していた状態,すなわち保護基が離脱した状態で基板表面に化学吸着していることがわかった.また,蛍光顕微鏡を用いたイメージング計測結果から,高いS/N比で微小領域における温度分布の取得が可能であることが明らかになった.しかしながら,励起光の照射による光劣化の影響は相対的に大きく,実用化のためにはその対策が必要であることもわかった.さらに,これらの研究成果を,第17回流れの可視化に関する国際会議(ガトリンブルグ・アメリカ),第12回学際領域における分子イメージングフォーラム(東京),日本伝熱学会北陸信越支部秋季セミナー(福井),日本機械学会北陸信越支部学生会第46回学生員卒業研究発表講演会(金沢),日本機械学会北陸信越支部第54期総会・講演会(基調講演・金沢)で発表した.
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