研究課題/領域番号 |
26420124
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
彭 國義 日本大学, 工学部, 教授 (90295527)
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研究分担者 |
清水 誠二 日本大学, 工学部, 教授 (80154293)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 混相流 / ウォータージェット / キャビテーション / 気泡流 / 可視化計測 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
福島第一原発など廃炉に決まった原子炉の解体作業に水中構造物の切断工法が不可欠となるが,強力なアブレシブ・サスペンション・ジェット(以下,ASJ)を水中切断に用いた場合,スタンドオフ距離の増加に伴ってその加工能力が急激に衰えることが課題になっている。本研究は,気泡流被覆水中ASJの生成手法を確立し,流れの構造解析および水中切断実験によって鞘付きノズルの寸法と使用条件を決定し,高性能水中ASJノズルシステムの開発を目的とする。平成27年度では,PIVおよび数値解析の手法を用いて,気泡流被覆水中ウォータージェットの速度分布を計測し,水中ウォータージェットの流れ構造および通気の影響を調べた。また,気中および水中環境下においてASJの切断実験を行い,気泡流被覆水中ASJの切断特性を調べた。実験および数値シミュレーションの結果により下記の知見を得た。 (1)水中ウォータージェットに発生するキャビテーション気泡雲は,ジェットまわりのせん断層に集中して下流へ周期的に放出し,キャビテーション発生しない場合と比べ,キャビテーション数が0.1まで低下した場合の水中ウォータージェットコア速度の減衰が遅くなる。鞘付きノズルを用いて水中ウォータージェットの有効加工距離を確保する手法の有効性が示唆された。 (2)通気鞘ノズルを用いて形成される水中ウォータージェットのコア速度は,測定した通気流量範囲では,非通気水中ウォーターにより高い傾向が示された。 (3)通気鞘付ノズルを用いて形成される気泡流被覆水中ASJの相対切断深さは,鞘内キャビティ内圧で定義されたキャビテーション数σ_cの低下にしたがって増加する傾向が示された。水中ASJへの通気流量が増大するとキャビテーション数σ_cは低下するが,ある限度以上に通気流量を大きくしてもσ_cのさらなる低下はなく,水中ASJの相対切断深さはほぼ一定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究計画として,(1)鞘付パイプの構造設計と寸法パラメータの影響,(2)通気流量と水中ASJ の切断能力との関連,気泡流に覆われる一定濃度の固体粒子を含むASJ のモデリングとの三つ内容を予定した。上記(1)と(2)の内容はほぼ予定通り行ったが,ノズルヘッドに取り付ける通気鞘パイプは狭い区間に制限され,本年度も引き続き鞘パイプ出口形状の改良を検討する必要がある。また,固体粒子を含む水中ASJ のモデリングについて,相変換を伴う気・液・固の三相流のモデリングはとても複雑であり,水中ASJのような実用問題の数値計算に非常に大きな計算容量が必要なので,モデリング手法を変更し,固体粒子の影響を無視して圧縮性気泡流キャビテーションモデル解法を用いてキャビテーションを伴う水中ウォータージェットの数値解析を行った。次年度は,計算モデルを改良し,計算コードの効率をさらに向上させて固体粒子の作用を考慮に入れて水中ウォータージェットの解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は引き続いて,下記の実験および数値解析を行い,本研究目標の達成に努める。 (1)鞘付きノズルによる気泡流被覆水中ウォータージェットのPIV計測を行い,鞘パイプの寸法(内径と長さ)と出口形状および噴流パラメータの影響を調べる。その上,鞘パイプの最適化を検討する。 (2)通気鞘付きノズルを作成し,切断実験用多関節ロボットに装着してASJによる水中切断実験を行い,研磨材濃度,噴射圧力,通気流量によってASJ の水中切断能力の変化を調べ,当該実験条件でのASJの最適使用条件を見出す。 (3)数値解析おいては,圧縮性気泡流キャビテーションモデルを用いて通気鞘付きノズルによる水中ウォータージェットの数値シミュレーションを行い,水中ウォータージェットの広がりと脈動特性および速度分布の定量化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用消耗品の一部は次年度に利用するように状況が変わったため
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次年度使用額の使用計画 |
今年の残金(184,970円)は,次年度実験用消耗品の購入に使用する。
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