研究課題/領域番号 |
26420127
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
角田 勝 近畿大学, 工学部, 教授 (60113403)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 紙・パルプ / ディフューザ型流路 / パルプ繊維濃度 / 繊維分散 / ヘッドボックス |
研究実績の概要 |
製紙業界では、地球温暖化防止に関するCOP15の消費エネルギー削減目標に向けて、また東日本大震災復興および原発問題による電力節約のために、脱水設備の小型化と省エネルギーが強く求められている。そのため、業界では、これまでの0.5~0.8%の低濃度パルプ液から、高濃度パルプ液中でも繊維分散が可能となる抄紙機ヘッドボックスについての技術開発と、それに関わる学術的研究が急務となっている。そこで、本研究では報告者が開発したパルプ繊維濃度評価技術や流れ中の繊維挙動に関する知見から、ディフューザ型流路を用いて高濃度パルプ繊維の分散を促進してその制御を図るとともに、ヘッドボックス内流路の最適化を探求するものである。 実機のハイドロリック型ヘッドボックスの形状を参考に、初年度(平成26年度)製作した広がり角が12°に続いて、平成27年度には16°の透明アクリル製ディフューザ型試験流路を製作した。これらの試験流路についてパルプ液流れの特性を可視化観察してみたところ、ディフューザ型流路内のパルプ液流れ特性は、広がり角度および入り口と出口部の面積比はもとより、ディフューザの上流直管部内径にもかなり依存していることが分かった。また、広がり角度が16°と大きくなると急拡大流路で見られた再フロック化が比較的高い流速でも生じるようになり、高濃度パルプ繊維の分散促進を図る上では、逆効果となりうることも分かった。 以上の知見に基づいて、平成27年度後期には入り口内径が初年度の22mmから12mmのディフューザ型流路(広がり角度12°)についてパルプ液流れ特性を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも報告しているように、初年度での文献調査や実験装置の製作は概ね達成でき、続く平成27年度も前期には同様に進んでいる。ディフューザ型流路については一般工業配管の場合、広がり角の大きい流路が用いられている。そこで、当初、広がり角の大きい流路での研究を計画していたが、パルプ液の高濃度分散を図るために、さらに入り口内径の影響を調査することを平成27年度後期には加えている。これらの点から「おおむね順調に進展している」と自己評価している。 ディフューザ内のパルプ液流れの挙動は単相水流の場合よりもかなり複雑で、概要は把握できたものの、今後、研究内容(条件)についてはさらに焦点を絞ることが肝要である。なお、このような進捗状況下ではあるが、管内や抄紙機ヘッドボックスのモデル化流路内のパルプ液流れの基本特性について研究成果を発表している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26・27年度の研究成果に見られるように、ディフューザ流路内の圧力分布・パルプ繊維の挙動や出口部でのパルプ繊維分散の度合いは、ディフューザ形状はもとより流入条件とパルプ液濃度で異なる複雑流れとなっている。これらの挙動を事業期間内に広く解明することには、これまでの知見からおのずと限界がある。製紙業界で求められている繊維分散の促進とその制御を研究期間内で図るためには、さらに絞った条件下での研究が肝要である。 そこで、広がり角については小さい流路を取り上げて、高濃度分散の促進に繋げることを考えている。
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