数値流体力学などのシミュレーション手法と組み合わせて利用され,物理現象の理解や製品設計に役立てられてきた多目的設計探査手法を,これまでは試行錯誤的に行われてきた風洞試験に導入することにより,風洞試験方法を革新することを本研究の目的とし,開発した手法の有効性をプラズマアクチュエータの風洞試験により実施することとしている.本年度は,昨年度までに実施したプラズマアクチュエータの多目的設計探査について,追加の風洞実験を行いながら,得られた結果を精査し,翼の空力特性に対してはバースト周波数の影響がもっとも強く,バースト周波数が大きいとき(6程度)に高揚力低抵抗設計になり,小さいとき(1程度)に高揚力高抵抗設計になることなどを明らかにした.また,代表的ないくつかのパレート最適解について粒子イメージ流速計測法により流れ場の観測を行い,高揚力低抵抗設計は剥離領域が小さく,高揚力高抵抗設計は比較的剥離領域が大きいことを示した.このことは高揚力低抵抗設計は乱流遷移・再付着を促しており,高揚力高抵抗設計は大規模渦構造が揚力を向上させていることを示唆している.以上のことから,風洞実験と多目的設計探査を組み合わせた実験手法により,効率的なパラメトリックスタディが実施可能であることが示された.また,本研究課題で提案された手法により,プラズマアクチュエータによる翼周り流れの剥離制御方法について有益な知見を得ることに成功した.
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