レッドクスフロー電池内の活物質輸送現象を明らかにし、充放電効率に影響を及ぼす支配因子を特定するとともに、高効率を維持したまま大規模化を達成するための電池電極構造および電解液流動制御方法を提示することを目的とし、高電流密度化した際の電池性能・支配的となる損失要因の評価および電流密度分布測定による内部状態の評価手法を確立した。これら実験およびモデル解析から、高性能化のための知見を提示した。得られた主な成果を以下にまとめる。 1.電極であるカーボンフェルト内の電気抵抗と空隙内を満たす電解液内のイオン抵抗が及ぼす電池性能に対する影響を影響可能なモデルを構築した。これにより、高電流密度運転ではイオン抵抗の影響により電極厚み方向に反応分布が生じることを明らかにするとともに、高周波インピーダンスによる抵抗測定からは評価できない電極内抵抗過電圧の影響の適切な評価を可能とした。 2.上記モデルによる評価から、電極内の抵抗過電圧を低減するためには、電極の電気抵抗よりも電解液のイオン抵抗の影響を低減させるほうが有効であることを示した。 3.電流密度分布測定により、電流密度分布およびセル過電圧に対して負極の流量影響のほうが正極よりも大きくなることのほか,対向流条件においては電流密度分布は小さくなるが、平均電流密度が同じ場合には並行流と比べて過電圧は同程度であるか、もしくは若干増大することを示した。 4.限界電流密度に近い条件における解析結果より、活物質濃度が高く放電能力の高い領域で積極的に放電反応を行い、活物質濃度の低い領域では放電反応を抑えるような制御がセル全体としての高電流密度運転のために有効となることを示した。
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