研究課題/領域番号 |
26420136
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村田 章 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60239522)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フィルム冷却 / 伝熱促進 / ガスタービン翼 / ディンプル / 非定常法 / 流れの可視化 / LES |
研究実績の概要 |
フィルム冷却はガスタービン翼表面への空気膜形成により高温燃焼ガスからの熱流入を遮蔽する高熱効率化に必須の技術である.特に翼後縁部は,両面からの熱負荷が非常に高いがその薄さのために内部冷却が困難な部位であるので,片側壁を除去したカットバック形状を採用している.そこでのフィルム冷却では,熱遮蔽性能を維持したままでカットバック面の積極的な冷却(伝熱促進)が要求される.これは従来とは異なる制約条件下での新たな伝熱促進問題となる.本研究は,伝熱計測,PTV乱流計測,LES・DNS数値解析を流れパラメータとカットバック粗面形状を変化させて行い,最適粗面形状の提案とその熱遮蔽冷却原理の説明を行うことで,この新たな伝熱促進問題に解を与える. 伝熱実験での作動流体は空気であり,冷却流流路は高さH,主流流路は高さ4H,幅40Hである.固体内3次元熱伝導を考慮した非定常法によって,フィルム冷却効率と熱伝達率の同時計測を行う.主流レイノルズ数25,000,ブロー比M=0.5~2.0とする.初年度のカットバック粗面形状は千鳥配列のティアドロップディンプル面とし,ディンプル面全体を角度0~75度まで15度刻みに回転させることでディンプル数密度一定の下での実験を行った. PTV計測実験での作動流体は水であり,直径50μmの樹脂粒子で流れを可視化し,高速度ビデオカメラ2台で撮影する.YLFレーザからシート光を照射し,連続時刻間での粒子位置追跡から速度場を算出する.配列の影響を調べるために,千鳥配列および碁盤目配列での45度傾斜ティアドロップディンプル面での速度3成分乱流計測を行った. LES・DNS解析では粗面形状の複雑さを考慮し,非構造格子での有限体積法を用いる.初年度はディンプル傾斜の影響を調べるために千鳥配列での傾斜なし(0度)と45度傾斜ティアドロップディンプル面での計算を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伝熱実験ではディンプル数密度一定の下での傾斜角度(面全体の回転角度)の影響を15度刻みで調べることで,フィルム冷却効率(熱遮蔽性能を表す)は傾斜角度の依存性が低いこと,また,30度傾斜の場合にヌセルト数(熱伝達率の無次元数)および正味熱流束低減率(Net Heat Flux Reduction: NHFR)がともに最大となることがわかった.30度傾斜の場合には流れ方向にディンプルが一列に並ぶ配列となり,傾斜角度は異なるがPTV計測実験での45度傾斜ティアドロップディンプル碁盤目配列(流れ方向にディンプルが一列に並ぶ配列)は千鳥配列よりも幅方向への二次流れ,乱れ強度,レイノルズ応力が上昇していることが確認されている.運動量輸送と熱輸送の増減は多くの場合一致することからこの流れ方向に一列に並ぶ配列の影響が理由のひとつと推測される.また,LES解析では千鳥配列での傾斜なし(0度)と45度傾斜ティアドロップディンプルでの計算を行い,実験結果との一致をみている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の結果から,ディンプル数密度一定の下では30度傾斜の場合にフィルム冷却総合性能(NHFR)が高いことが示されたが,その理由としては30度という傾斜角度の影響と流れ方向に一列にディンプルが配列する影響の2つが考えられる.今後,配列だけの影響を調べるための球状ディンプルでの実験および30度傾斜の場合のPTV計測,LES解析を行うことで熱遮蔽冷却原理を説明するとともに,最適粗面形状を探索していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
高速度ビデオカメラの購入を別の科研費との合算にて行ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に国際会議発表2件を行う際の参加登録費・旅費として,また,実験用ディンプル面の材料費として使用予定である.
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