ナノ流体中における核沸騰熱伝達では、伝熱面上にナノ粒子層が形成されることで伝熱面の表面性状が変化し、この結果、限界熱流束が大きく上昇する。このため、ナノ流体は、核沸騰熱伝達を安価かつ大きく上昇させるための方策として注目されている。ただし、ナノ粒子層と伝熱面の付着状況は必ずしも強靭ではないため、核沸騰や流動に起因する圧力変動等により、ナノ粒子層の剥離が比較的容易に生じる。このため、本研究では、ナノ粒子層の付着強度とナノ粒子層の剥離が生じた場合に核沸騰熱伝達や限界熱流束がどの程度変化するかを明らかにすることを目的とした。具体的には、3種類のナノ粒子(二酸化チタン、アルミナ、シリカ)を用いてナノ流体を作成し、ナノ流体中で核沸騰を生じさせることによって、銅製の伝熱面上にナノ粒子層を形成した。これを用いて実験を実施し、次に示す結果を得た。 (1)ナノ粒子の堆積量はナノ粒子の材料により大きく異なる。本研究で調べた範囲では、二酸化チタン>アルミナ>シリカの順であり、二酸化チタンとシリカでは倍以上の相違があった。 (2)ナノ粒子層の付着力は1-10N/m2のオーダーである。また、粒子材質の影響を強く受け、二酸化チタン<アルミナ<シリカの順であった。 (3)ナノ粒子層の剥離が激しくなるとともに、核沸騰熱伝達率は向上、限界熱流束は低下する傾向であった。特に、激しい剥離が生じた条件では、ナノ粒子層がない場合と比較して、熱伝達がむしろ向上、限界熱流束が低下する場合もあった。 (4)ナノ粒子の材質の他、ベース液中におけるナノ粒子の分散状況によっても、ナノ粒子の堆積量や熱伝達特性が変化する場合があることを示した。
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