研究課題/領域番号 |
26420144
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
服部 博文 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (30467352)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乱流熱伝達 / 直接数値シミュレーション / 壁面加熱条件 / 圧力勾配 / 温度成層 / 温度混合 / 温度助走区間 |
研究実績の概要 |
本研究は,外力が重畳した乱流境界層や壁面熱的境界条件が変化する壁面乱流場等の,熱伝達機構と高熱伝達条件を直接数値シミュレーション(DNS)によって解明かつ探究するものである. 平成27年度は,(1)種々の温度成層乱流境界層に逆圧力勾配を付加した乱流熱伝達場,(2)種々の温度成層乱流境界層における温度助走区間乱流熱伝達場,(3)発達した円管乱流場内の温度助走区間乱流熱伝達場,(4)2次元丘を通過する種々の温度成層乱流境界層における乱流熱伝達場,(5)壁面加熱条件が変化する場合の乱流熱伝達場,(6)異なった温度を持つ乱流を混ぜた平行平板間乱流混合温度場について解析を行い,それぞれ以下の知見を得た. (1)では安定成層に逆圧力勾配を付加することで高熱伝達条件が得られること,ある安定条件では,乱れが減衰しつつも,対流の影響により乱れが再活発化することを発見した.(2)(3)では,平板と円管を流路途中で加熱した乱流場温度助走区間を生成し,そこにおける乱流温度場の成長過程を観察した.(2)では温度助走区間に成層条件を課し,条件による熱伝達率の挙動の違いを明確にした.また,加熱条件によっても熱伝達率の減衰が違うことをDNSで再現した.(4)では複数の2次元丘を通過する温度成層乱流境界層の熱伝達場のDNSを行い,温度成層と壁面形状の影響が乱流熱伝達場に与える効果について詳細に調べた.(5)では流れ方向に沿って壁面加熱条件が変化する乱流温度場の基本統計量の取得および,温度場の重合せ(スカラー線形性)について調べた.重合せが成立するためには加熱条件を熱流束一定条件とすることが必要であることを証明した.(6)では入口温度分布条件の違いで高混合が達成される場合があることを見出した.また,LESやRANSで使用される乱流モデルの予測性能評価を行い,新たなRANS乱流モデルの構築も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は,(1)種々の温度成層乱流境界層に逆圧力勾配を付加した乱流熱伝達場,(2)種々の温度成層乱流境界層における温度助走区間乱流熱伝達場,(3)発達した円管乱流場内の温度助走区間乱流熱伝達場,(4)2次元丘を通過する種々の温度成層乱流境界層における乱流熱伝達場,(5)壁面加熱条件が変化する場合の乱流熱伝達場,(6)異なった温度を持つ乱流を混ぜた平行平板間乱流混合温度場について解析を行い研究目的に沿った以下に示す知見を得たこと,また,新たな試みとして,速度場と温度場の非相似性が強く出せる平板に沿う平面噴流乱流熱伝達場のDNSとRANS計算を行い,結果が出つつあること,さらに(6)の解析結果からは,新たな乱流モデルの構築を行ったことから,当初の計画以上に進展していると自己評価した. (1)では,安定成層に逆圧力勾配を付加することで低壁面摩擦,高熱伝達条件が得られることを発見した.(2)(3)では,乱流温度助走区間において,平板では成層条件も課し,不安定条件でより高い熱伝達が得られること,円管では,熱流束一定条件で壁温一定条件より高い熱伝達率が得られることをDNSにより再現したが,どのような条件を課した場合でも,加熱開始点から少しの間は,ほぼ同じ熱伝達率が得られることを見出した. (4)では,温度成層の安定条件により,再付着距離が大きく伸びることと,熱伝達率の低下を与えることが分かり,壁面形状と成層の影響を明確にした.(5)では,重合せが成立するためには加熱条件を熱流束一定条件とすることが必要であることを証明し,加熱条件の変化による熱伝達率の急激な増減について明確にした. (6)では, LESやRANSで使用される乱流モデルの予測性能評価を行い,これまでのRANSモデルより予測精度の高い新たなRANS乱流モデルの構築を行った.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として,研究目的に沿った様々な乱流熱伝達場における直接数値シミュレーション(DNS)を行う.DNSでは,高熱伝達場が得られやすい温度助走区間において,さらなる高熱伝達条件を探るため,壁面噴流乱流場や,平行平板間,円管内乱流場の計算を引き続き行う.そして,高熱伝達条件が得られた乱流熱伝達場の詳細な乱流構造や熱伝達機構を理解するために,4象限分類法や流体軌跡解析法といったより先進的な乱流熱伝達場の解析方法や,必要により新たな解析方法を取り入れ,現象理解に繋げる.また,平成27年度に新たに構築した乱流モデルを,本研究で実行されたDNSの乱流熱伝達場で評価し,より高予測精度が得られるように改良に着手し,RANSでも乱流熱伝達場における熱伝達率が定量的に予測できるようにする.乱流モデルの改良では,実際の乱流熱伝達場の計算も考え,計算負荷が低くなるような改良も施す予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費で購入した計算機を維持させるために購入すべきハードディスク等の消耗品の支出を,計算機の使用方法の工夫で極力抑えたため.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度として,国際会議を中心とした研究成果発表や,研究成果を国際ジャーナルに投稿することに尽力するため,その旅費や参加費,英文校閲料に研究費を当てる予定である.
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