本研究は,2つの外力が重畳し,かつ壁面熱的境界条件が変化する壁面乱流場における熱伝達機構と高熱伝達条件を解明かつ探究するために,(1)逆圧力勾配が作用する安定・中立・不安定温度成層を伴う水平平板上の乱流境界層熱伝達場,(2)壁面熱的境界条件を流路途中で変化させた乱流境界層熱伝達場,(3)異なった温度を持つ二つの流路における乱流を一つの流路で混ぜた平行平板間乱流混合温度場,(4)安定・中立・不安定温度成層を伴う水平円管内温度助走区間乱流熱伝達場,(5)安定・中立・不安定温度成層を伴う水平平板上の2次元丘を通過する乱流境界層熱伝達場,(6)安定・中立・不安定温度成層を伴う水平平板上の温度助走区間乱流境界層熱伝達場,(7)安定・中立温度成層を伴う水平平板上の温度助走区間乱流壁面噴流熱伝達場,(8)安定・中立・不安定温度成層を伴う垂直平板上の温度助走区間乱流境界層熱伝達場,(9)逆圧力勾配と安定・中立温度成層を伴い壁面温度境界条件が変化する水平平板上の乱流境界層熱伝達場といった,様々な乱流熱伝達場における直接数値シミュレーション(DNS)を実行した.また,これらの現象を予測する乱流モデルを再構築するために,乱流温度境界層におけるスカラー線形性の立証と,レイノルズ平均モデルシミュレーション(RANS),大規模渦シミュレーション(LES)で用いられる様々な乱流モデルを本研究で得られたDNSデータより評価し,その問題点を探った. 注目する成果として,安定・中立・不安定温度成層場に非平衡逆圧力勾配を付加したDNSの結果から,装置実験では得難い詳細な壁面近傍までの乱流熱伝達場基本統計量を取得したことと,安定温度成層乱流境界層に逆圧力勾配を付加することで低壁面摩擦,高熱伝達条件が得られる場合があることや,わずかな外力バランスの変化で乱流熱伝達場へ大きな変化があることを発見したことがあげられる.
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