研究課題/領域番号 |
26420146
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
名田 譲 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 講師 (50383485)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 着火遅れ時間 / 既燃ガス希釈 / フレームレット着火モデル / 非予混合乱流浮き上がり火炎 / 浮き上がり高さ |
研究実績の概要 |
本研究では,既燃ガス希釈の影響を考慮できる非定常修正フレームレット着火モデルの構築のために,既燃ガスにより希釈された酸化剤と燃料を用いた対抗流の着火計算と,既燃ガスを模擬した高温低酸素空気中の噴流浮き上がり火炎の実験を行う. 1.数値的研究:本年度では,プロパンを燃料とした対抗流の着火計算用プログラムを作成した.しかし,計算が収束せず,未だ解を得られていない.このため,研究計画書の「研究が当初計画通りに進まないときの対応」のとおり,平成27年度では,汎用ソフトウェアを用いた計算に切り替える. 2.実験的研究:高温低酸素空気中の噴流浮き上がり火炎の実験装置を作成した.実験計画書の図5に示したとおり,ヒーター付ノズルと側面ヒーターからなる予熱装置を作成し,中央に同軸バーナーを設置した.計画では浮き上がり火炎を耐熱ガラスにて囲う予定であったが,壁面の影響が強いため断念した.代わりに,実験装置全体をフードで囲うことで外部からの擾乱を防止している.浮き上がり火炎の形成には成功し,浮き上がり高さに対する燃料濃度の影響を調べた.この結果,燃料濃度が低下するに従い,浮き上がり高さは高くなること,得られた浮き上がり高さを予混合モデルにより整理できることを示した.さらに,模擬既燃ガスの温度測定を行い,500℃程度まで模擬既燃ガスを昇温できることを確認した.ただし,温度分布が一定でないため,今後側面ヒーターの出力調整などにより,実験条件の高精度化を図る予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値的研究に関しては,作成したプログラムに収束性の問題が生じた.しかし,本研究で対象とした着火計算が収束性の極めて悪い計算であることは,研究開始時点から予測されていた.このため,予定どおり汎用ソフトウェアによる計算に切り替える.また,実験的研究においては,平成26年度中に実験装置を組み上げることができた.また,浮き上がり火炎の形成にも成功しており,平成27年度に計画していた非燃焼場における温度分布測定を前倒しで行っている.ただし,ヒーターから噴出される模擬既燃ガスの温度の空間的ばらつきが大きい.この点においても計画開始時点で予測されており,側面ヒーターの出力と断熱材の厚みを変えることで現在調整中である.以上のように,数値的研究において幾つかの問題点は生じているものの,実験的研究においては平成27年度の計画を前倒しで進めている.発生している問題は研究開始時点の予測の範囲内であり,研究自体はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
数値的研究に関しては,汎用ソフトウェアを用いた計算に切り替える.この場合,当初予定していた一次元計算ではなく,二次元計算となるため計算時間が長くなる.しかし,収束時間は短くなるため,全体として計算に必要な時間は短縮できる.対抗流の二次元着火計算を行い,着火遅れ時間に対する希釈進行効果の影響を明らかにする.ノズルから噴出する燃料と空気の濃度と温度を希釈率の変化に基づき時間変化させ,着火させる.さらに,乱流運動による希釈率の変動を再現するために,希釈率の変化を正弦波状の変動で模擬し,着火遅れ時間に対する希釈率変動の影響を明らかにする. 実験的研究においては,ノズルから噴出する高温模擬既燃ガスの温度分布を空間的に一定とする対策を講じる.現段階では,外側壁面近傍の温度が極端に低く,300℃程度の温度差が生じている.壁面ヒーターの出力調整と中央同軸ノズルの周囲の断熱材厚さを調整することで,平坦な温度分布を実現する.断熱材厚さで調整できない場合は,中央の同軸ノズルの周囲に螺旋状の冷却管を設置し,中央の同軸ノズルを冷却する.これにより,中央付近の高温領域を狭くすることができる.上記対策を講じたうえで,700℃程度まで温度を上昇させ,火炎形成位置の測定を行う予定である.
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