研究課題/領域番号 |
26420147
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱本 芳徳 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20334469)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 吸着 / 伝熱 / 吸着速度 / 有効拡散係数 / 実験 / 表面拡散 / 境膜抵抗 / 蒸気 |
研究実績の概要 |
平成26年度には、膜状の多孔質酸化アルミニウムを伝熱面に直接生成させた蒸気吸着体を対象に、脱着反応中の吸着体の温度をほぼ一定に保つ機能を備えた実験装置を製作した。装置は、吸着体の重量を精度よく計測するために、カンチレバー方式の天秤を採用した。本方式でも蒸気雰囲気中や湿り空気中における測定が可能である。また、吸着体の温度を時系列で計測するためにサーモビュアーを活用した点が特徴である。 まず、湿り空気雰囲気で水蒸気脱着速度を測定し、吸着材の有効拡散係数を算出した。蒸気分圧が2.0 kPaで吸着体の温度が25℃から100℃までステップ的に上昇させた場合、約1.0×10-10 m2/sであった。また、有効拡散係数に及ぼす吸着体の温度依存性も確認し、従来のアレニウスプロットで整理できることを明らかにした。次に、温度制御が十分ではなく、重量計測の精度向上のために吸着体を重ねて搭載した熱重量天秤(TGA)方式でこれまでに得た有効拡散係数と比較したところ、TGA方式よりも1オーダー程度も大きいことを明らかにした。 以上より、吸着体表面の境界設定方法や等温状態での計測方法の重要性を確認するとともに本方式の有効性を確認できた。 さらに、吸着体表面の境界設定の一つであるところの雰囲気流体が有効拡散係数に及ぼす影響を調査した。具体的には、ほぼ静止した湿り空気と水蒸気の雰囲気で、それぞれ吸脱着速度を測定した。水蒸気中の有効拡散係数は吸着体内細孔の表面拡散係数程度であること、すなわち蒸気中では吸着体と雰囲気流体間の流体境膜抵抗が無視できることを明らかにした。一方、湿り空気中では蒸気中よりも約1オーダー小さかった。以上より、静止した湿り空気中では、境膜抵抗が、表面拡散の抵抗よりも約2オーダー大きく、支配的であることを明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画のように、測定法と装置の検討を行って、実験装置を製作したこと、ならびに脱着速度の測定実験を行い、有効拡散係数を求め、さらに温度依存性を解明したことにより、当初予定していた内容を実施できたので。また、次年度の実施内容である抵抗の分離も着手し始めているので。
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今後の研究の推進方策 |
温度制御方法でステップ的に冷却する方法をもう少し検討する必要がある。平成27年度の計画のとおり、別の手段による重量計測手法を検討する。 また、流体境膜抵抗の風速依存性についても、計画のとおり実験及び理論解析を行い、解明していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の一部が予定よりも安価に購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度実施予定内容で支出する物品費、センサーなどに活用する計画である。
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