研究課題
本研究は、伝熱板に吸着材を薄膜塗布して作製あるいは板と一体化させて作製した新規の伝熱促進型蒸気吸着体を対象として、水蒸気の等温状態での吸脱着反応速度を測定し、吸着材細孔内の蒸気拡散速度に及ぼす細孔径の影響や吸着材まわりの流体境膜内(濃度境界層)における蒸気移動速度に及ぼす非凝縮性気体の影響を明らかにすることを目的としている。また、境膜の移動係数と粒子内拡散係数に分離・同定し、整理することにより、新規蒸気吸着材の創製、吸着現象を応用したナノスケール機械における熱工学的課題の解決や熱エネルギー変換工学の発展に貢献する基礎的な知見を得ることを目指している。平成28年度は、等温の湿り空気中における蒸気吸脱着時の反応速度の測定、すなわち吸着質の時間あたりの質量計測の方法として、吸着材温度がほぼ一定であり、空気の流動が生じても安定測定が可能な水晶振動子マイクロバランス(QCM)を採用した。そして、等温場の湿り空気中におけるシリカゲル微粒子塗布層への吸脱着時の質量変化を測定した。その結果、静止湿り空気中では、総括物質伝達抵抗である反応時定数は吸着過程で40秒、脱着過程で32秒であった。また、発吸熱をともなう熱伝導数値解析を行い、反応中の吸着材の温度変化は最大で0.03K以下とほぼ一定であることを確認した。次に、流れのある湿り空気中の吸脱着時の質量変化を測定し、時定数を求めた。その結果、吸着でも脱着でも風速が0.1 m/s 程度で3秒程度であり、総括物質伝達抵抗は十分に小さいことを明らかにした。さらに流速を増加させて塗布層表面に生じる濃度境界層の厚さを小さくして測定を行った。その結果、総括物質伝達抵抗を濃度境界層内の抵抗と吸着材内部の拡散抵抗に分離して、前者は風速の1/2乗で整理できることを明らかにした。そして、後者の抽出を行い、それぞれ定式化を行い、物質移動抵抗の推算に有用な知見を得た。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Proc. of the Fifth IIR International Conference on Thermophysical Properties and Transfer Processes of Refrigerants
巻: - ページ: 1-8
10.18462/iir.tptpr.2017.0109
第54回日本伝熱シンポジウム講演論文集
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Proceedings of the 8th Asian Conference on Refrigeration and Air Conditioning
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第53回日本伝熱シンポジウム講演論文集
2016年度日本冷凍空調学会年次大会講演論文集
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Proceedings of the 27th International Symposium on Transport Phenomena
Proc. of the 4th Intl. Forum on Heat Transfer
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http://therme.mech.kyushu-u.ac.jp/index-j.html