1.熱伝達試験と流動可視化観察の結果から,微細流路における沸騰熱伝達には核沸騰と蒸発の熱伝達メカニズムが寄与し,後者の蒸発熱伝達には,通常径管でも生じる強制対流蒸発に加え,微細流路では,特に,スラグ流の流動様式が現れる低流量あるいは低クオリティの低熱流束の条件で,熱伝達の良い液膜熱伝導蒸発の様式が寄与することを明らかにした. 2.水力直径 1 mm 程度の円形の微細銅管を冷媒循環試験装置に組み込み,これまでのR410AとR32冷媒に加え,新冷媒R1234yfについて,沸騰熱伝達の試験を行い,低流量条件を含めて,種々の流量および熱流束で,流れ方向局所(流路断面平均)の熱伝達率データを得た.R410AやR32冷媒と同様,核沸騰,強制対流蒸発,液膜熱伝導蒸発の3つの伝熱特性様式の寄与があることを確認し,伝熱様式線図を作成した. 3.R410A,R32,R1234yfの熱伝達実験データをもとに,微細流路に有効な蒸発熱伝達について物性値の影響を検討して,次の知見を得た.強制対流蒸発の熱伝達率は,熱伝導率が大きくまた気相密度が小さいほど大きい.また,液膜熱伝導蒸発の熱伝達率は,熱伝導率が大きくまた表面張力が大きいほど大きい. 4.核沸騰,強制対流蒸発,液膜熱伝導蒸発の3つの熱伝達様式の寄与を考慮した熱伝達予測式を検討作成し,円形流路と比べ,非円形流路では,核沸騰と強制対流蒸発ではあまり違いがないものの,液膜熱伝導蒸発でより良好な熱伝達を示すこと,特に矩形流路では良好な熱伝達を示すことを明らかにした.
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