研究課題/領域番号 |
26420149
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
迫田 直也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30532337)
|
研究分担者 |
河野 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50311634)
高田 保之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70171444)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 水素 / 混合物 / 超臨界流体 / 熱物性 |
研究実績の概要 |
水素を含む混合流体を対象とした臨界現象観察装置において観察窓付圧力容器の温度を制御する循環恒温槽にヒーター機能を追加し,50 ℃まで昇温できるようにした.サイフォン式ボンベを用いて二酸化炭素純物質を液相から圧力容器に15 ℃,5 MPaの気液二相の状態で充填し,これを密閉,昇温させることで,メニスカスの変化および超臨界域への遷移の様子や分子の会合に起因する臨界タンパク光の着色を観察した.圧力容器は真空チャンバー内に設置されており,均熱ブロックに流れる循環液にて圧力容器温度を制御しているが,試料圧力を測定する精密圧力センサは真空チャンバーの外に設置している.圧力容器内の試料の充填量とメニスカスの挙動から,精密圧力センサへ繋がる常温の配管部分(デッドスペース)が臨界点近傍における挙動に大きく影響していることを明らかにし,装置の改良を実施した.二相域で充填されている二酸化炭素に水素を加え,22 ℃, 14 MPaまで昇温,加圧してこの2成分系を超臨界状態にした後,密閉させた試料の温度を降温させて相変化の過程を観察し,二酸化炭素純物質との比較を行った.本装置では膨張容器を用いて,気体膨脹法によるPVT性質の測定を行った.観察窓付圧力容器と膨張容器の容積比を検定した後,窒素を用いたPVT性質の試測定では0.1 %の密度偏差で既存の状態方程式と一致した.本研究では臨界タンパク光が現れるような臨界点近傍でのマイクロチャンネル内を流れる水素混合流体の熱的挙動を明らかにすることを目標としており,マイクロチャンネルの開発について調査を行った.拡散接合を用いることでかなり高い圧力まで耐えられることから,設計,製作方法について検討を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,臨界現象観察装置において圧力容器の温度制御用循環恒温槽にヒーター機能を追加し,より広い温度,圧力で,水素と二酸化炭素の混合流体における超臨界状態を含む相変化の観察が可能となり,二酸化炭素純物質との比較を通して,水素を含む場合の混合流体の特性について考察を行っている.また,計画通り膨張容器を用いた気体膨脹法によるPVT性質の測定を実施し,より正確な熱物性値の決定を目指している.超臨界状態では比較的圧力が高いことから,マイクロチャンネルの設計,製作方法については調査,検討を重ねており,水素エネルギー分野においても超高圧での実用例があることから,設計の参考にするなどしてH27年度ではマイクロチャンネルの試作を開始する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
水素と二酸化炭素の混合流体の相平衡やPVT性質を測定し,既存の状態方程式との比較を行う.またガスクロマトグラフを導入するなどして混合物の組成の精度を向上させる.熱伝導率や粘性係数といった輸送性質も熱解析には必要となってくることから,対応状態原理を用いた物性の推算方法について調査する予定であり,サーモリフレクタンス法を用いた熱伝導率や熱拡散率の実測についても検討を進める.これら水素混合流体の物性における特性を踏まえ,マイクロチャンネルの試作を開始する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
水素は取扱いに比較的注意を要し,また水素混合系の超臨界状態は挙動が良く分かっていないことから,H26年度では温度,圧力範囲を広げ,挙動の観察を行い,この特性について考察を行ってきた.簡易な状態方程式を用いた推算では,水素と二酸化炭素の混合流体の挙動は,水素がわずかに含まれるだけで,二酸化炭素純物質の挙動とは大きく異なることが予測されている.このように混合流体の挙動の解析に重点を置き,マイクロチャンネルの試作までには至らなかったため次年度への繰越金が生じたが,複雑な混合流体の熱物性の正確な把握がマイクロチャンネル設計の基盤情報となり,本研究の要となる部分であって,マイクロチャンネルの製作方法については調査を進めている
|
次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り繰越金と次年度の研究費を合わせ.マイクロチャンネルの試作および温度制御,計測機器類の購入を予定している.
|