研究課題/領域番号 |
26420150
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小糸 康志 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (70347003)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ポリマーヒートパイプ / 熱サイフォン / 潜熱輸送 / 沸騰 / 液物性 / 有効熱伝導率 / プラスチック / 可視化 |
研究実績の概要 |
プラスチック材料を用いてヒートパイプを製作し,二種類の作動液を用いて,熱輸送に関する実験を実施した.本年度は基礎的なデータを取得するために,プラスチック材料にポリカーボネートを,作動液に水とエタノールを用いた.ヒートパイプは,断面5.0mm×3.0mm,長さ101mmの直管状で熱サイフォン式とし,ヒートパイプの加熱にはマイクロセラミックヒーターを,冷却には水冷ジャケットを使用した.実験では,加熱量を変圧器と電力計で2.0W,4.0W,6.0Wと変え,冷却温度を低温恒温槽で20℃に設定し,ヒートパイプ各位置の温度の経時変化を熱電対で測定した.特に本実験では,プラスチック表面の濡れ性にも着目し,ヒートパイプ内の現象を捉えるために高速度ビデオカメラを用いた. 高速度ビデオカメラでの撮影により,作動液に水を用いた場合,エタノールを用いた場合と比較して,ヒートパイプの蒸発部で作動液がより激しく沸騰する様子が確認できた.また,温度分布の測定結果から,いずれの作動液を用いた場合もヒートパイプは安定的に作動するが,作動液に水を用いた場合,エタノールを用いた場合と比較して蒸発部と凝縮部の温度差が小さくなることが確認された.蒸発部での現象の相違ならびに作動液の潜熱の相違の影響があらわれていると考えられる.なお,ヒートパイプの簡易伝熱モデルで有効熱伝導率を評価すると,作動液に水を用いた場合,最大で1363W/(m・K),エタノールを用いた場合,最大で964W/(m・K)であった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加熱系,冷却系,測定系から構成される実験装置を準備し,プラスチック材料にポリカーボネートを,作動液に水とエタノールを用いて,基礎的な実験データを取得した.高速度ビデオカメラでの撮影も予定通り進めることができ,実験結果から,ヒートパイプ内での現象と熱輸送特性が明らかとなった.また並行して,柔軟性プラスチックの表面制御に関する検討も進めており,今後,ヒートパイプに応用展開する計画である. 以上の研究進捗状況から,研究目的の達成度について「おおむね順調に進展している」と評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の実験結果を踏まえた上で,まず,濡れ性などのプラスチックの表面制御とヒートパイプの作動との関係について検討を進める.また,プラスチックは一般的に熱伝導率が低いため,加熱部と冷却部では表面制御と同時にプラスチックを薄くし,伝熱抵抗を軽減する計画である.次に,以上の検討結果を応用展開し,柔軟性を有するプラスチックを用いてヒートパイプを製作して,その最適化を進める.平成26年度に準備した実験装置を利用し,熱輸送性能と設計条件,熱輸送性能と使用条件の関係を明らかにする.最終的には,フレキシブル・ヒートパイプの形成に最適な条件を確定する計画である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)は,高速度ビデオカメラ(平成26年度購入物品)のスペックを絞り込むことにより生じたものである.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(B-A)は,研究成果を国際会議で発表するための旅費に充てる計画である.
|