グラフェンを含むプラスチック材料を用い,3Dプリンターを使用して自励振動式ヒートパイプを製作し,熱輸送特性に関する実験を行った.具体的には,厚さ2.5mmの平板上に10本の矩形溝(断面積:1.5mm×1.5mm,長さ:80mm)で蛇行流路を設け,その上に厚さ0.4mmの薄板を3Dプリンターで付加して自励振動式ヒートパイプを製作した.十分な気密性を確保するために,ヒートパイプ表面に銅メッキを施した.また,本プラスチック材料と各種液体との濡れ性を調べ,濡れ性が良好なエタノールを作動液として使用した. 実験では,ヒートパイプに加熱ヒーターと冷却ジャケットを取り付け,まず,恒温槽から冷却ジャケットに冷却水を流した.次に,ヒートパイプがほぼ一様温度になった後,ヒーターによる加熱を開始して,ヒートパイプの蒸発部温度,断熱部温度,凝縮部温度,ならびに,冷却ジャケット入口・出口温度の経時変化を熱電対で測定した.作動液の封入率を50%,恒温槽内の冷却水の温度を2.5℃,流量を0.25L/minとし,ヒーターによる加熱量を2.0Wから20分おきに1.0Wずつ増加させ,蒸発部温度が90℃となるまで実験を継続した.ヒートパイプを曲げた場合(角度:20°)と曲げない場合(角度:0°)について,同様に実験を行った.実験結果から,ヒートパイプを曲げると,曲げない場合と比較して熱輸送性能が少し低下するが,いずれのヒートパイプについても内部で作動液が流動し,ヒートパイプが作動して熱輸送が行われていることを確認した.
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