研究課題/領域番号 |
26420151
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
岩本 光生 大分大学, 工学部, 准教授 (80232718)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チョクラルスキー法 / 回転磁場印加 / 垂直磁場-電流印加 / 超音波ドップラー法 / 液体金属 / 導電性流体 / 数値解析 / 流れの測定 |
研究実績の概要 |
本研究は液体金属の流れを,流体が導電性を有することを利用し,磁場や電流を印加することにより制御し,その制御効果を超音波ドップラー法により直接測定することにより明らかにすることを目的としている。 チョクラルスキー法による半導体用単結晶棒の育成などでは,金属融液から結晶の製造を行うが,この流れの安定化や制御のため磁場の印加が行われている。融液の流れは製造する結晶の品位を左右するが,融液は高温であり,実際の流れの挙動を測定することは困難である。このため本研究では融液に磁場や電流の印加した場合の流れを,超音波ドップラー法により直接測定を行った。 昨年度は初年度として,半導体単結晶育成に用いるチョクラルスキー法を模擬した装置の作成と基礎的な流れの測定を行った。本年度は2年目として,下記の検討を行った。 (1)垂直磁場-電流印加による3次元的な流れの挙動の測定:チョクラルスキー法を模擬した系において,ルツボにガリウム融液を満たして加熱し,また上部に水冷したた模擬結晶棒を設置し回転させた。このときルツボ内には温度差に起因する自然対流と,結晶棒の回転による強制対流が発生する。この流れをルツボ側面2カ所,底面1カ所に設置した超音波送受信機により測定することにより,3次元的な流れの挙動を測定た。この結果ルツボ内には非軸対象な流れが生じており,印加電流Iや磁束密度Bを変化させると,I×Bに比例して流速が変化することが分かった。 (2)数値シミュレーションによる検討:超音波ドップラー法による流速測定では,超音波進行方向の流れしか測定できず,ルツボ全体の流れの詳細は不明である。このため数値解析的に流れを検討した。解析では回転磁場を印加した場合の流れの数値解析結果を実験と比較し,同様な傾向を見た。また回転磁場による旋回流の速度は磁束密度の2乗×磁場回転数で示されるローレンツ力に比例することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は装置の製作と,動作確認のためルツボ側面の1方向からの流速分布の測定を行った。本年度は2年目として下記の検討を行った。 (1)垂直磁場-電流印加による3次元的な流れ挙動の測定:チョクラルスキー法を模擬した装置を用い,融液として低融点金属のガリウムを用い,ルツボ内の流れを超音波ドップラー法により3方向から測定することにより,ルツボ内の流れの詳細を検討した。実験では流速を測定するための超音波送受信機をルツボ側面に2カ所,底面に1カ所設置した。実験ではガリウム融液を満たしたルツボを加熱し,上部に水冷させた模擬結晶棒を回転させ,このとき生じる流れを測定した。この結果,ルツボ下面と上面で中央を横切る非軸対象な流れとなっており,これが結晶回転方向に回転することにより温度や速度分布が時間的に変動していること,またその振動周期は磁束密度×印加電流に比例して長くなることを示した。 (2)数値解析による流れの検討:昨年度報告した回転磁場による流れの制御では旋回流を発生させ,その遠心力により流れを制御するが,この流れはローレンツ力により生じ,またこれは誘導電流と磁場により生じる。このため,磁束密度や磁場回転数を変えた場合の,融液の流れ・誘導電流・ローレンツ力・温度分布を数値解析的に求めた。この結果,実験と同様に非軸対象な中心軸を横切る流れが発生し,これが回転し,この回転方向速度はどの高さ位置でも磁束密度の2乗×磁場回転数で示されるローレンツ力に比例して増加すること,これによる遠心力により軸方向速度などが変化することが分かった。 以上のように,平成27年度研究計画に示した,3次元的な流れ分布の測定と,回転磁場印加チョクラルスキー法流れの数値シミュレーションについて検討を行い,上記結果が得られたため,おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度として,下記の検討を行う。 1.「回転磁場」や「垂直磁場-電流印加」による流れの制御について,さらに広い範囲での実験を行い,流れの詳細について明らかにする。 2.垂直磁場-電流印加による流れについて,数値解析的に検討し,回転磁場印加の場合との誘導電流やローレンツ力,流れなどの違いを明らかにする。 3.当初の研究計画には無いが,これまでの検討で融液を入れているルツボの材質により流れが変化するのでは無いかと思える現象が見られたため,導電性ルツボと非導電性ルツボにより流れがどのように変化するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での成果発表において,原油価格の下落により航空機料金に燃料サーチャージが加算されなかったため,その差額分余剰を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に旅費として使用する。
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