本研究は半導体用単結晶を育成する方法であるチョクラルスキー法において、高品位結晶を育成するためのルツボ内原料融液流れを制御する方法として、回転磁場による流れの制御効果を実験および数値解析により検討したものである。 チョクラルスキー法における融液の流れを磁場により制御する場合、原料融液は液体金属で導電体であるため、その融液の流動と印加した磁場により誘導電流が生じ、この電流と磁場により生じるローレンツ力により流れが変化する。矩形容器内の自然対流において、導電性融液に磁場を印加したとき、容器の導電性が流れに影響を及ぼすとの尾添らの報告があり、チョクラルスキー法でも同様に容器の導電性により流れが変化することが考えられる。このため、本年度は下記検討を行った。 (1)チョクラルスキー法ルツボ内融液に回転磁場を印加した場合の、ルツボの導電性が流れに及ぼす影響を実験的に検討した。具体的には金属ガリウム融液を用いたモデル実験を行い、ルツボはガラスルツボ内に金メッキした銅板を貼り付けた導電ルツボと、ガラスルツボを用いた非導電ルツボを使用した。 (2)数値解析により、ルツボが完全な絶縁体の場合と、導体の場合を比較した。 この結果、磁束密度が小さな場合や、磁場回転数が低い場合は導電ルツボと非導電ルツボでほとんど差異はみられず、また導電ルツボでルツボの電荷が保持される場合と、しない場合(導電ルツボをアースした場合としない場合)でも、ほとんど差異は見られず、通常用いる領域ではルツボの導電性の影響は小さいことが分かった。
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