研究課題/領域番号 |
26420154
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
泉 政明 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (50336939)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 物質移動 / 水素濃度 / レーザ干渉法 / 酸素センサ |
研究実績の概要 |
固体酸化物形燃料電池(SOFC)の利便性と発電効率を高めるために,その電力負荷追従性が求められている.しかし急激な負荷増加は水素供給律速による燃料極の局所的な酸化を引き起こし,燃料極にダメージを与える恐れがある.本研究では,急激な負荷変動時に発生する燃料極側の水素濃度分布の時間的変化を,燃料ガス流動場および燃料極内部の両方で同時計測し,水素ガス移動機構を明らかにする.その上で燃料極の電気化学反応場にダメージを与える負荷変動速度および供給水素流量等の限界条件を検討する. 平成26年度には,SOFCの燃料ガス流動場の水素濃度をレーザ干渉法で測定するための実験装置を作製した.平成27年度には,燃料極支持式SOFCの燃料極内部の水素濃度の計測法を確立した.φ50μmの白金線の表面を酸化ジルコニウム(ZrO2)で被った酸素センサを作製し,これを燃料極の中心部に挿入した.燃料極の構成部材はニッケル(Ni)と酸化ジルコニウム(ZrO2)で,電解質もZrO2であるため,センサ部と空気側電解質表面との間の起電力を測定することにより,ネルンストの式を用いてセンサ近傍の酸素分圧を測定することが可能になる.なお,空気側電解質表面の酸素分圧を一定に保つため,過剰な流量の空気を供給した.燃料ガスのガス組成は水素と水蒸気のみであるため,発電雰囲気はほぼ大気圧の高温(約800℃)の状態であることから化学平衡状態が成り立ち,測定した酸素分圧からセンサ部の水素濃度を求めことができた.この測定した水素濃度の値は,定常一次元数値解析により求めた値とほぼ一致し,本計測法が妥当であることを検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電実験装置を設計・作製し,800℃まで昇温できることを確認した.また,SOFCの燃料ガス流動場の水素濃度をレーザ干渉法で測定するための光学系を組み立て,室温においてであるが,ガスの密度変化時の干渉縞の移動を確認した.また,燃料極支持式SOFCの燃料極内部に酸素センサを挿入して,燃料極内部のセンサ近傍の水素濃度を測定する手法を確立した.ただし,当初センサをSOFC作製時に燃料極内に埋設する方法を計画したが,この方法ではセンサの白金と燃料極のNiが電気的に接触し,起電力を測定できないことが判明したため,燃料極にφ0.5㎜の空洞を穿孔し,その孔にセンサを挿入する方法に変更した.この方法で測定した水素濃度は定常一次元数値解析により求めた値とほぼ一致し,本計測法が妥当であることを検証した.以上の実績から当初設定した目標を概ね達成したと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成28年度)は,レーザ干渉法による燃料ガス流動場の水素濃度計測と,センサによる燃料極内部の水素濃度計測を同時に行う.燃料ガス流動場と燃料極内部における負荷変動時の水素濃度分布の時間変化を調べ,燃料極側の水素ガス移動機構を明らかにする.その上で燃料極の電気化学反応場にダメージを与える負荷変動速度および供給水素流量等の限界条件を明らかにする.
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