固体酸化物形燃料電池(SOFC)の利便性と発電効率を高めるために、その電力負荷追従性が求められている。しかし急激な負荷増加は水素供給律速による燃料極の局所的な酸化を引き起こし、燃料極にダメージを与える恐れがある。本研究では、燃料極支持型SOFCを用いて急激な負荷変動時に発生する燃料極側の水素濃度の時間的な変化を、燃料ガス流動場および燃料極内部の両方で計測できる手法の開発を目指した。 燃料ガス流動場の水素濃度計測については、レーザ干渉法(マッハ・ツェンダー光学系)により800~900℃の温度域において計測できる実験装置を作製し、発電電流密度を0.5A/m2変化させた時の水素濃度変化の計測に成功した。レーザ干渉法は2本に分けたレーザ光の一方を測定部に通し、もう一方を参照光とし、再び両レーザ光を重ねた部分に生じる干渉縞の移動量を測定することにより、測定部の濃度変化を計測する手法である。 燃料極内部の水素濃度計測については、白金線の表面を酸化ジルコニウムで被った酸素センサを作製し、これを燃料極の中央部に挿入した。燃料極の構成材料はニッケルと酸化ジルコニウムの混合体、電解質も酸化ジルコニウムであるため、空気側の電解質表面に設けた参照極とセンサ間の起電力はネルンストの式で表される。参照極の酸素分圧を一定に保つことにより、この起電力からセンサ近傍の酸素分圧を測定することができる。また、燃料ガスの組成は水素と水蒸気のみであるため、化学平衡状態が成り立つとすると測定した酸素分圧からセンサ近傍の水素濃度を求めることができる。更に局所水素濃度を求めるために、センサの感知部分を小さくし、他の部分を酸化アルミニウムで被った改良も加えた。その結果、計測した水素濃度の値は、3次元数値解析の値とよい一致を示し、本計測法の妥当性が検証できた。
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