研究課題/領域番号 |
26420156
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
矢作 裕司 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60265973)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 燃焼 |
研究実績の概要 |
助成2年度目は、時系列トモグラフィーによる局所消炎の回復機構の解明および合成周波数の脈動噴流の特性(申請書研究フロー図のStep2)を中心に実験を遂行した。実験装置の基本構造は昨年度と同様である。昨年度実施した第一段階の「全体消炎発生のクライテリアおよび局所消炎とその回復機構の周波数特性」で構築した単一周波数結果から合成する周波数など決定した。具体的な研究成果は、次の4点である。①局所消炎の発生と回復現象の可視化:時系列トモグラフィー画像より噴流よる渦と火炎位置に着目しモデリングを行った結果、一連の現象は4つのフェーズに分けることができた. 噴流によって発達する渦は、燃焼ガスの熱輸送及び再循環流などを引き起こし、局所消炎端部の火炎が未燃焼ガスの流速に勝るように伝播することで、局所消炎部を塞ぎ火炎を回復させる。②局所消炎の発生から全体消炎への遷移:全体消炎に至る条件におけるモデルと現象の比較を行った結果、局所消炎が回復しないため、噴流の渦によって新たな火炎が形成されることおよび局所消炎端部の火炎が未燃焼ガスの流れ場に逆らうようにして伝播することが明らかになった。③未燃焼ガス流速を変化させた際の局所消炎と全体消炎の発生境界の変化:①および②で予測された未燃焼ガス流速が局所消炎の回復に重要な役割を果たしているという予測に対し消炎特性からその妥当性を検証した結果、未燃焼ガス流速の変化は局所消炎の発生境界に大きな影響は与えないが,局所消炎と全体消炎の発生境界には大きな影響をもたらすことと、流速の増加に従い全体的に消炎しやすくなることが明らかとなった.④局所消炎部収縮過程における火炎構造:熱輸送について温度分布に着目しその妥当性を検証する結果、噴流は高温な燃焼ガスによって暖められ、その現象は数msの間に起こる。局所消炎端部の火炎端は中心軸方向に伝播し,局所消炎から回復することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度、計画していた研究の第二段階「合成周波数の脈動噴流の特性」については、やや計画に遅れあるが、昨年度実施した「全体消炎発生のクライテリアおよび局所消炎とその回復機構の周波数特性」をさらに詳細に解明した結果、平成28年度実施予定の「局所消炎の回復機構」がかなり解明されたことは予測を上回る成果であった。とくに、未解決課題であった自己伝播回復機構と渦輸送回復機構のかなりの部分が明らかになった。その原因は、固体粒子のアルミナとシリコンオイルを使った流れの可視化に成功して局所消炎端のスイスロール状の渦の存在が明らかになったことである。得られた結果は、平成27年6月にナポリで開催された10th Pacific Symposium on Flow Visualization and Image Processingおよび12月に筑波で開催された日本燃焼学会主催の第53日本燃焼シンポジウムで発表した。特に、12月の燃焼シンポジウムで発表した時系列データーはその後の研究の進展に重要な役割を果たす。具体的な成果は、①局所消炎からの回復に対して局所消炎の発達過程で形成されるスイスロール状の渦が重要なこと、②局所消炎部では,未燃焼ガスと燃焼ガスがその渦の薄層により分断されていること、③残存している火炎片からの 高温の燃焼ガスが局所消炎端部に形成された渦により輸送されることにより,未燃焼ガスを再反応させて消炎部全体に伝播すること、以上の3点である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、「局所消炎回復機構」に対しては計画以上に進展したが、「合成周波数の脈動噴流の特性」は計画よりやや遅れた結果となった。当初の研究計画では、平成28年度(1)自己伝播回復機構(30%)、(2)渦輸送回復機構(30%)および(3) 3か年の総合的な結果をまとめ(40%)を行う予定であったが、(1)および(2)については、昨年度かなり前倒しで実施できたので、平成27年度進展の遅れた合成周波数を与えた場合の研究を重点的に実施する。合成周波数の脈動噴流に対する研究では、等倍周波数と不等倍周波数に対して、脈動周波数20Hzを基準として20Hz+30Hz および20Hz+40Hzの全体消炎および局所消炎とその回復限界はすでに明らかにしている。消炎特性結果を基準として火炎片の噴流に対する応答性および局所消炎からの回復機構とそこから全体の消炎現象をレーザートモグラフィーを中心とした可視化方法により解明する。レーザー計測に関する実験手法は、平成27年度に確立されているので直ちに実行する。不等倍周波数に対しても同様である。順調に研究が進行している場合には、噴流の物性を変えて実験を実施する。その場合には、まずは、酸化剤を含まない窒素噴流を基本として、熱容量の大きな二酸化炭素や拡散係数の異なるアルゴンなどに対して大地段階で実施した実験項目までさかのぼり検討を加える。火炎片(Edge flame)が局所消炎した領域の未燃焼ガスに 伝播し,最終的に局所消炎で発生した穴を塞ぐ形で回復す ると予測している.このモードの解析に重要な点は,局所 消炎部の未燃焼ガスの流速と Edge flame の伝播速度の釣合 を粒子画像流速計(PIV)で定量化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験装置のなどの費用が脈動流の実験の進捗の遅れに使用できなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、昨年、遅れて実行できなかった脈動流の実験を重点的に実施するために使用する。
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