非イオン性界面活性剤添加による銅試験板への氷の付着力を能動的に制御することを目的として,界面活性剤分子の疎水基の界面吸着に着目して,氷の銅板への付着力を制御するための以下の実験を行った.先ず,界面活性剤の添加する非イオン性界面活性剤の濃度を変えることによる銅試験板への氷の付着力への影響と一定濃度の非イオン性界面活性剤を添加した条件下での銅試験板の表面温度が氷の付着力へ及ぼす影響を,界面活性剤の銅試験板への吸着量や界面活性剤が吸着した氷の表面エネルギーの観点から検討した.また,氷の付着力の結果を他の研究者の結果と比較するために,付着力を氷の付着面積で除したせん断応力で評価した.また,付着力測定と氷の付着面積の測定は,走査型プローブ顕微鏡(SPM)を使用してナノスケールで行った.その結果,せん断応力と吸着量には負の相関があり,吸着量の増加によりせん断応力は低下した.そして,界面活性剤濃度の増加とともにせん断応力は低下した.そして,界面活性剤添加により無添加の場合に比べ最大60%以上せん断応力が低下した.また,せん断応力は銅の表面温度の低下とともに増加した.一方,銅の表面温度の低下は銅と氷の表面エネルギーの増加を引き起こした.このことより,せん断応力の増加は,銅と氷の表面エネルギーの増加に起因することが分かった.また,銅の表面温度が低下しても氷に吸着する界面活性剤の吸着量は変化せず,同一の銅表面温度でのせん断応力の低下は界面活性剤の吸着によって引き起こされることが分かった.
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