これまで構築したLSペレットの吸収挙動モデルは反応面(未反応核表面)に到達したCO2が全て消滅する未反応核モデルとして近似的に扱ってきた.しかしながら化学反応が律速となる低温・低CO2濃度の条件においては実験値との間に乖離が見られ,未反応核内部にもCO2が浸透していると考えられる.そのことから,化学反応と多孔質体内物質移動を考慮した反応帯形成モデルをCOMSOLにて構築した.また,添加した炭酸カリウムと吸収反応の生成物である炭酸リチウムの共晶により形成される溶融塩を考慮した溶体モデルにより,反応率に対するギブスエネルギー変化および平衡CO2分圧を計算し,温度および分圧に対する最大CO2吸収量を導出した.さらに,昨年度までに確立したLSペレットの作製手順を用いてペレットを外注し,CO2吸収試験および水銀圧入法によりLS単粒子における粗さを考慮した単位表面積あたりの化学反応係数,気相境膜係数,有効拡散係数を導出した.反応帯形成モデルと単粒子ペレットの吸収挙動が一致し,モデルの妥当性を確認した上で,円筒形ペレットの形状設計を実施した.円筒形ペレットの吸収速度に対しては外径および内径の感度が大きく,高さの影響は小さく算出されたが,TG-DTA試験結果においても同様の傾向が示された. 実用化にあたっては,吸収と放出を順次切り替えるセミバッチ式反応器にて充填することを想定しており,充填層反応器での解析モデルは反応器管内を軸対象とする2次元の非定常で,固体と流体の温度が異なる非等温の充填層としてモデル化した.実験結果と比較したところ,CO2吸収量および反応熱のピークに関しては概ね一致した.また,円筒状の内径をパラメータとして吸収容量および吸収完了時間を計算したところ,円筒状LSの内径が大きいほど吸収容量は減少するが,吸収完了時間は短縮され,トレードオフの関係にあることが示された.
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