研究課題/領域番号 |
26420161
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
片峯 英次 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00224452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 最適設計 / 形状最適化 / 形状同定 / 連成問題 / 有限要素法 / 随伴変数法 |
研究実績の概要 |
本研究では,伝熱と弾性変形を連成させた熱弾性場,あるいは伝熱と流れを連成させた熱対流場などの基礎的なマルチフィジックス問題に対して,合理的な多目的形状最適化の解法を提案し,その妥当性を検証することを目的とした.平成27年度の主な研究実績は次の通りである. 1.前年度に実施した,伝熱と流れを連成させた非定常自然対流場の部分境界,あるいは部分領域における温度分布時刻歴をコントロールする形状同定について,研究成果を国内会議にて口頭発表し,雑誌論文へ投稿した.また,熱弾性場の問題では,部分境界における熱変形量の大きさを維持し体積を最小化する形状決定について,研究成果を国内会議にて口頭発表した.さらに,粘性流れ場の部分領域において流速分布をコントロールして,流れ場全体での散逸エネルギーを最小化する粘性流れ場の多目的形状最適化について,研究成果を国際会議にて口頭発表した. 2.熱弾性場の問題では,温度変化に基づく熱変形と外力に基づく力学的変形に対して重み付き線形和で表した目的汎関数を設定し,それを最小化するための多目的形状最適化の解法を試みた.問題を定式化し,形状修正の感度関数の導出,プログラムの開発を行い,簡単な数値例を通じて解法の妥当性を検討した. 3.これまでの自然対流場の形状最適化問題では,境界における熱伝達境界の影響を考慮していなかったが,熱伝達境界の影響を考慮した理論の構築とプログラム開発を行った.実際には,自然対流場の熱伝達境界の部分境界における放熱量最大化を目的とする形状最適化問題に対して,問題の定式化を行い,形状修正の感度関数の導出,解析プログラムの開発を行って,数値解析結果より解法の妥当性を確認した.また,自然対流場の部分境界,あるいは部分領域における温度分布と流速分布の時刻歴を同時にコントロールする多目的形状同定問題の解法を試み,解析結果より解法の妥当性を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度から28年度の3年間において,具体的な問題として,(1)熱弾性場における多目的形状最適化,(2)熱対流場における基礎的な多目的形状最適化を取り上げ,問題の定式化,形状修正のための感度関数の理論的導出,およびその感度関数を用いた数値解析を行って,提案する解法の妥当性を検証することを目的とした. (1)熱弾性場問題では,部分境界における熱変形コントロールと質量最小化の多目的形状最適化に対して,基礎的な研究成果が得られている.また,温度変化に基づく熱変形と外力に基づく力学的変形を同時に最小化するための多目的形状最適化に関して,基礎的な研究成果が得られつつある. (2) 熱対流場の問題では,部分境界,あるいは部分領域における温度分布時刻歴をコントロールする形状同定問題の解法の研究成果が雑誌論文として掲載された.さらに,熱伝達境界を考慮した熱対流場の形状最適化問題へ拡張することにより,熱伝達境界の部分境界における放熱量最大化を目的とする形状最適化,部分境界,あるいは部分領域における温度分布と流速分布の時刻歴を同時にコントロールする多目的形状同定問題の解法に対して,良好な研究成果が得られつつある.
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今後の研究の推進方策 |
熱弾性場問題では,(a) 温度変化に基づく熱変形と外力に基づく力学的変形を同時に最小化するための多目的形状最適化に関して,詳細に検討する.(b) 部分境界における応力分布コントロールと質量最小化の多目的形状最適化等について検討を開始する. 熱対流場問題では,(a)自然対流場の部分境界において放熱量最大化する形状決定の解法,さらに,(b)放熱量最大化と散逸エネルギー最小化の多目的形状最適化の解法について検討を開始する. これまでに得られた研究成果について,国内,国際会議において口頭発表,および雑誌論文として発表することを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において,提案する形状最適化手法の妥当性を検証するためには,理論に基づいた有限要素解析プログラム開発を行い,実際の数値解析では数値計算機が必要である.当初の計画では,高性能を有する計算機を購入し,数値解析を実施する予定をしていた.しかしながら,本研究着手後に,連成を考慮した複雑な弾性場あるいは熱対流場の数値解析が比較的容易に実施できるFreeFem++の存在を知った.そこで,昨年度(平成26年度)は,高性能数値計算機の購入を保留し,主にそのFreeFem++を利用した解析プログラムの開発,および数値解析を実施した.その影響で,本年度および次年度に使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
上記に関連して,高性能を有する計算機の購入ではなく,中規模の数値解析用計算機を複数台購入して研究を進めており,今後もその予定である.
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