研究課題/領域番号 |
26420162
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
石丸 和博 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60232344)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 非平衡プラズマ / 化学気相合成 / 高酸素還元活性 / 燃料電池触媒 |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池の製造コスト削減と高い耐久性を目指し、特にカソード電極に用いられる高性能な触媒として期待できる「外側層に欠陥があるとともに窒素を含む多層カーボンナノチューブ」を取り上げる。合成法として高周波交流を用いた高い非平衡性とプラズマ制御性を有するグロー放電プラズマによる化学気相合成法を用いる。そして、このプラズマを用いたメタン原料による化学気相合成によって、高性能(高酸素還元活性)な触媒を効率的に合成するための反応制御パラメータを探る。この際、電界強度を決定する電極間距離は重要なパラメータとなる。 2年度目は、カーボンナノチューブを合成するための既存のプラズマ化学気相合成装置内において、電極間距離の調整を正確かつ柔軟に行える「電極間距離調整装置」を設置した。そして第二段階の実験として「容量結合型プラズマを発生させる電極間の距離」を条件とし、メタン/ヘリウム混合原料ガスを用いた高周波交流による大気圧グロー放電プラズマ化学気相合成法を適用した。そして、カーボンナノチューブの合成を目標とした炭素系材料の合成を行った。特に、電極間距離が大気圧プラズマに及ぼす影響や、合成した炭素系材料に及ぼす影響を、前年度設置した小型発光分光装置および高速度カメラも用いて調査・検討した。 また、同時にカーボンナノチューブ中に必要とされる欠陥を別の装置で別途与える方法を2種類考えている。一つ目は、オゾンによる部分酸化を用いる方法である。光触媒コーティング電極を用いた大気圧誘電体バリア放電によるオゾン生成を試みており、高濃度酸素原料からの高濃度・高効率オゾン生成の条件を明らかにした。2つ目は大気圧マイクロプラズマジェットを用いる方法である。特に流速制御されたヘリウムガスによる同軸二重管構造のマイクロプラズマジェットのプラズマ特性を、実験とシミュレーション解析により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体高分子形燃料電池に用いることができる白金代替材料となる触媒材料の合成を最終的な目標としているが、高性能・高品質な材料、そしてよりコストが低減できるようにレベルアップしていくためには、実験条件(パラメータ)の自由度が非常に重要な要素になる。 本研究ではプラズマ励起を用いた化学気相合成を用いているが、これまでの実験装置では、プラズマの状態を決定する電界強度や材料の合成状態を決定する原料ガスの流動に大きな影響を与える「電極間距離」を自由に変更することが困難であった。しかし、現在の装置ではこれが自由に変更できるように改善された。そこで、この電極間距離をパラメータとしたプラズマ状態の変化とプラズマ状態に対応した合成材料の形態・性質に焦点を置いた研究が進んでおり、研究の次段階としての成果が挙がっている。 さらに、直接合成中に操作を加えて、カーボンナノチューブに欠陥を作るという方法とは別に、合成材料に別途操作を加えることで欠陥を作る方法も並行して進めている。これには、2つの手法を提案しており、一つはオゾンによる部分酸化を利用する方法であり、もう一つはマイクロプラズマジェット(特に、同軸二重管構造による特徴的なジェット)による物理的な刺激を利用する方法である。ともに、カーボンナノチューブの化学気相合成に用いるプラズマ発生・利用技術を適用することが可能であることから、高効率化等の付加価値をもつけながらその特性に関する研究を進めており、成果が挙がっている。 従って、「おおむね順調に進展している」と判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目においては、大気圧下でのグロー放電を用いた材料の化学気相合成を行い、その電極間距離の影響を調べてきた。さらに、プラズマ特性(放電特性)を調べるうえで、一部減圧下での影響を調査・検討した。これを材料合成特性にまで広げ、調査・検討する。また、原料ガスの流動状態についても調査・検討を行うため、流れの可視化実験を行う。なお、燃料電池の触媒としての性能評価がまだ十分に検討されていない点がある。これは、保有する回転リングディスク電極装置による酸素還元活性測定によって行うことができる。現在、特定のカーボンナノチューブ構造を有する炭素系材料を、燃料電池触媒にすることを目指して研究を進めているが、必ずしもそうでない場合でも目標とする触媒性能を有する可能性があるので、特に材料の形態には拘らず評価を進めていく予定である。 また、部分酸化を施すことができるオゾン、及び物理的刺激を加える大気圧マイクロプラズマジェットを、カーボンナノチューブに欠陥を与える手段として用い、その結果を検討する。また、プラズマジェットについては、シミュレーション解析も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、装置改良を行うための「直線導入機(電極間距離調整装置)」を注文製作する予定であったが、既製の製品の導入と一部自作により十分対応可能であることが分かった。これにより、大幅に安価に装置改良を行うことができたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
材料の合成状態は、原料ガスの流動状態(特に電極間)の影響を大きく受ける。この流れを可視化するため、光学的な非接触方式による「シュリーレン法」を用いる。このための光源、高精度凹面鏡(2枚)、ナイフエッジから構成される「シュリーレンシステム」を購入し、現象解明に役立てる。
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