固体高分子形燃料電池の製造コスト削減と高い耐久性を目指し、特にカソード電極に用いられる高性能(高酸素還元活性)な触媒として期待できる「外側層に欠陥がある多層カーボンナノチューブ」を取り上げた。この合成法として主に高周波交流を用いた高い非平衡性とプラズマ制御性を有するグロー放電プラズマによる化学気相合成法を用いることとした。 3年度目は、第三段階の実験として「基板(接地電極)温度」を条件とし、メタン/ヘリウム混合ガスを原料とすることによって、カーボンナノチューブを目標とした炭素材料の合成を行った。特に、基板温度が大気圧プラズマに及ぼす影響や、合成炭素材料の状態・形態に及ぼす影響を、小型発光分光装置およびカメラを用いたプラズマ観察、及び合成材料の顕微鏡観察等により調査し、明らかにした。基板温度が高くなることによって、特に圧力が高い状況下ではガスによる対流の影響を大きく受ける。このため、高い基板温度では、基板へ材料前駆体が到達しにくくなり、合成炭素材料の量だけを考えれば、低温の方が有利といえる。しかし、特定の結晶構造の原子配列を促進するのは、表面エネルギー、すなわち高い基板温度が必要であり、トレードオフの関係となっていることが分かる。 また、同時にカーボンナノチューブ中に必要とされる欠陥を別の装置で別途与える方法を2種類考えた。一つ目は、オゾンによる部分酸化を用いる方法である。光触媒充填層、光触媒コーティング電極を用いた大気圧誘電体バリア放電によるオゾン生成を試みており、高濃度酸素原料からの高濃度・高効率オゾン生成の条件を明らかにした。2つ目は大気圧マイクロプラズマジェットを用いる方法である。特に流速制御されたヘリウムガスによる同軸二重管構造のマイクロプラズマジェットのプラズマ特性、流れ特性を、シャドウグラフ法を含めた実験とシミュレーション解析により明らかにした。
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