2017年度の最終目的は3次元空間モデルへの拡張であったが,本研究の提案手法の特徴および仮定の一つである「質量部に比べて柔軟構造部の質量は非常に小さくそのシステム全体への挙動の影響は無視できる」が3次元化に大きく影響を及ぼすことが明らかになった.そこで,前年度の成果ではテザー衛星を前提とした1本のテザーで結合された2つの質量(先端質量)から構成されるシステムを対象とし,テザー上に小さな質量(中間質量)を配置することでテザー展開を効率的に行う方法を提案したが,この中間質量をテザー衛星の効率的な展開時の減衰のために用いるのではなく,テザーの慣性を表現する点と扱うことでテザーの質量特性を模擬する方法を提案した.本提案手法については数値解析によってテザーの先端質量の運動が中間質量の影響を受けている解析結果が得られ,定性的ではあるが物理的に解釈可能な運動を実現することができた.しかし,中間質量があることでその点において衝撃的な張力が発生する.提案手法ではこの衝撃的な張力の発生後の挙動として,剛体衝突に見られるような完全弾性衝突や非弾性衝突などに該当する挙動をパラメータによって与えることが可能であり数値解析においても挙動のそのパラメータへの依存性を確認した.しかし,1次元運動であっても実験検証が非常に難しく,このような衝撃的な張力に関するパラメータの決定法は今後の課題である.また,本手法はテザーが何らかの物体に接触した際に中間質量を接触物体の質量に置き換えることで柔軟構造であるテザーと剛体の挙動を模擬した計算を高速で実行できることになり,新たな研究テーマの展開にもつながる提案となった.さらに,本手法のモデルの特性から簡易的に多自由度のバネ質量系に近似することが可能であり,その結果として波動制御系を構築できることを示すことができ,将来的な超柔軟構造物の制御系設計につながる結果を得た.
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