研究課題/領域番号 |
26420166
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
村上 岩範 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80292621)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超電導浮上 / 高温超電導 / 磁気浮上 / 磁気軸受 / 超電導応用 |
研究実績の概要 |
本研究は、新たな型式の磁束集束型永久磁石配列を用いた高い磁束密度を持つ磁場の生成の実現、並びにこの磁石配列を用いた回転部と高温超電導バルク材を組み合わせる事による全軸方向に無制御で安定かつ高剛性な完全非接触高温超電導磁気軸受の開発を行うことを目的とする研究である。 この目的を実現するため,第一段階として平成26年度は本研究で提案する高密度磁束集束型磁石配列による高磁束密度永久磁石ユニットの開発を実施した.この磁石ユニットの開発を行うために,ユニットの全体の体積を一定とした状態で従来の磁束集束方法と提案する方法における集束磁束密度の比較を,シミュレーションを実施して比較した.この結果,最も大きな磁束密度は提案する方法の物が最も高いことが確認された.この結果に基づいて,本研究で提案する磁束集束方法を用いた本研究で提案する高温超電導磁気軸受(SCMB)に用いる永久磁石ユニットを実際に設計・試作しその磁束密度分布を計測した.この結果はほぼシミュレーション結果と等しくなったことから,シミュレーションによる磁石ユニットの磁場構成の予測がつくことが確認できた.この際,半径方向磁化された永久磁石にセグメント型磁石を用いた場合,磁性材料板による磁気緩衝部を挿入することによって,セグメント磁石の隣接部における大きな磁場変動を打ち消しほぼ均一で磁場変動のほとんど無い磁場を創出出来ることが確認された. この開発した磁石ユニットを用いたSCMBの機械的特性を計測した結果,浮上力として200N以上,半径方向の剛性は最大150Nとなり,高剛性な無制御非接触軸受を構成できることが確認された.また,高剛性の磁気軸受となったことからこれと反発型磁気浮上と組み合わせた結果,不安定な反発型磁気浮上系を安定化させることに成功し,浮上力は300N以上得られる結果となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は主に各部の磁束密度分布構成を検討するための解析、試作を実行する計画であった.第1 段階である提案した高密度磁束集束型磁石配列による高磁束密度永久磁石ユニットの開発・評価に関してはほぼその方法が確立した.この際に行う従来の代表的な磁束集束型永久磁石配列と比較した場合の本提案の優位性並びに欠点を明らかにすると共にその設計指針を明らかとしたが,未だ試行した類例が少なく(10パターン程度)主に影響を与えるパラメータを確定するには至っていない点がある. このシミュレーション結果を基にした試作を数種行い磁束密度測定、磁場解析等を実施しその結果とシミュレーション結果を試作することでシミュレーションにより実際の特性予測が可能となることが確認されたことからも概ね順調に進展していると考えられる.またセグメント磁石の使用による磁場変動を抑制する方策についても検討しこの問題についての解決策も明らかにしている. 本年度は本来複数の高温超電導バルク材を用いて超電導磁気軸受を構成する計画であったが,実際には単一のバルク材を用いた軸受となっている.このバルク材の複数化の代替として27年度に予定していた反発型磁気浮上とのハイブリット化を先行して実施したこれは単一のバルク材による軸受の剛性の向上が実現したためであり,この点において当初計画との差異があるが,計画の入れ替えを実施した結果である. 以上のことから概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
27年度は26年度の実績をふまえ,高温超電導(HTSC)磁気軸受の剛性の向上,複数のHTSCを用いた完全非接触HTSC磁気軸受の試作開発を行う.この時のHTSCの体積についての検討を実施する. また高密度磁束集束磁石ユニットにセグメント磁石を用いたことによる周方向磁束密度の不均一に起因する回転抵抗の有無及びその特性解析を実施する.この不均一を改善するための緩衝材としての磁性材料の検討を行う.具体的には磁性材料部の体積と収束磁束の関係を明らかにし,磁束密度を最大化しつつ磁束の均一化を可能とするパラメータの解明を目指す. 26年度で試行した反発型磁気浮上の安定化に対して,数値解析を実施し,これに基づいた実機の試作,特性解析実験を行うと共に,磁気反発部で起きる集束磁束を高温超電導体によってピンニングした場合の特性についても解析を実施する.これに伴い,この反発部の磁場構成の最適化についても検討を行う. また回転時の諸特性の解析を実施する事により本研究によるHTSC磁気軸受の有用性を確認する。この際、駆動方式は独自に開発したアキシャル型同期駆動をロータ外縁部に設置することによりロータの直接駆動を実現すると共に浮上ロータに対する新たな駆動方式についても同時に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた高温超電導バルク材の導入を取りやめた結果,差額が生じた.このバルク材は主にピッチング方向の剛性の向上するために不可欠であると考えるが,26年度においては,本来27年度に予定していた反発型磁気浮上と超電導磁気軸受の組み合わせを実施し,これによるピッチング方向の剛性の向上についての検証を行ったため,超電導バルク材に用いる予算の一部を永久磁石の試作に充当したためである.理由として,26年度の研究実績として,高密度磁束を持つ永久磁石ユニットの開発に成功し,反発型磁気浮上の安定化が可能であったため,この特性解析を優先した結果である.
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次年度使用額の使用計画 |
まず,平成26年度に当初予定していた高温超電導バルク材の購入を行う計画である.本バルク材は,機械的剛性をある程度必要とし,また酸化防止のため樹脂含浸処理を必要とするためにこの加工費用が必要となる.さらに本来27年度で計画していた駆動に用いる電力増幅器の購入,また複数の小型超電導バルク材を用いた高温超電導磁気軸受も開発に用いる永久磁石,機械材料が必要となり,この導入に充当する計画である.また特性解析実験のための液体窒素等の消耗品,駆動部の設置ための永久磁石,機械材料,電気材料,駆動制御を行うための制御装置としての電子材料,成果発表のための旅費及び論文投稿費用に充当する計画である.
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