研究課題/領域番号 |
26420167
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山口 誉夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (90323328)
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研究分担者 |
藤井 雄作 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80357904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 |
研究実績の概要 |
介護担当者や患者の負担軽減の検討をするために,生きた人体と接触,衝突する介護用機械の動特性を,筋肉の緊張や意識するかどうかまで考慮して解析している.生きた人体を問題とする検討では.多数の人体の動特性で共通な特徴と,質的に大きく異なる特徴を示す人がいる場合がある.平成27年度は,このような個人差を動特性モデルに含める検討を行った.そのために平成26年度までに開発した手法(非線形複素接触力要素を新たな有限要素として提案)を拡張した.例として,手のひらに運動物体が軽衝突する問題で検討した.実験としては,直動の空気軸受を用いて質点とみなせるブロック(浮上質量)を浮上させ,これに初速度を与えて運動させ生きた人間の手のひらに軽衝突させた.この衝突過程における浮上質量の速度を光波干渉計で測定し,さらに加速度,力,位置の時刻歴を求めた.得られた力と変位の関係から閉曲線のヒステリシス曲線が得られる.ほとんどの被験者のヒステリシス曲線は,初速度が増えるにつれ,閉曲線の先端部(変形が大きい時刻)が膨らむ応答となった.この時,初速度が小さい場合の閉曲線は,初速度が大きい場合の閉曲線の中に含まれた.しかし,特定の個人では,初速度が大きくなるにつれ閉曲線が,変形が大きい側にずれていく特徴が現れた.運動物体を予見して,手のひらで衝撃を減らすように受ける動作が意識せずに入ったと考えらる.この実験で得られた曲線を個人差を含めて計算でシミュレートをすることを検討した.非線形複素接触力要素の各複素係数を衝撃入力の初速度などの関数とすることで,特異な個人差を含む動特性モデルを構築できる可能性があることがわかった.これを導入し計算コードを改修した.平成27年度は「第6回国際機械工学研究会議」1件を発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度と平成27年度の2年間で,当初の申請時の計画では,「生体と介護機械用高分子材料が組み合わされた時の動特性を人間の視覚の有無や意識するかどうかを考慮した実験で把握する.」ことと「生体反応を考慮した動特性の数値解析モデル化を行い有限要素法へ組み込む.」ことが目標となっていた.平成26年度までに,予見した動作やあわてた動作の影響や視覚の有無による影響を考慮した衝撃特性の数値解析のモデル化を行ってきた.平成27年度は,非線形複素接触力要素の各複素係数を衝撃入力の初速度などの関数とすることで,特異な個人差に基づく動的応答の質的な変化を計算に入れられるようにした.そのための計算コードを改修し,手のひらに運動物体が軽衝突する問題で計算した.動的応答の質的な変化が実験結果と一致する計算結果を得た.達成度は,このような理由により「おおむね順調に進展している.」とした.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度と平成27年度までに,指や手のひらなどの生体に運動する物体が接触する問題について,視覚情報の有無での動的応答の変化や,特異な個人差に基づく応答の質的変化が表現できるような計算法と計算プログラムの開発と検証ができている.平成28年度(次年度)では,これらの生体反応を考慮した実験結果や計算結果を積み上げてまとめ,介護者と被介護者に,より安心安全な介護用機械アームの材料,動特性,作動計画を明確にしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度(次年度)では,平成26年度と平成27年度までの生体反応を考慮した実験結果および計算結果を分析してまとめ,介護者と被介護者に,より安心安全な介護用機械アームの材料,動特性,作動計画を明確にする予定である.この介護用機械アームの開発のために使用する.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度予定の安全安心な新たな介護用機械アームの開発のための直接経費に使用する.
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