研究課題/領域番号 |
26420181
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
西郷 宗玄 東洋大学, 理工学部, 教授 (80357053)
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研究分担者 |
岩本 宏之 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (90404938)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 振動制御 |
研究実績の概要 |
本年度は,懸垂索横変位波動制御の制御法の開発,振子振れ角波動制御の制御法の開発と実験的検証を行った. 懸垂索横変位波動制御では,差分制御則の導出,差分モデル及び分布定数系モデルによる差分制御則制御シミュレーションによる制御則の有効性の検証を行った.下端に集中質量を有する懸垂索運動方程式の差分近似波動伝搬解の提案とその精度検証を行い,さらに,上端固定境界節点に適用する制御則と差分境界の取り方を検討した.制御シミュレーションでは,差分モデル索でのシミュレーションに加えて,分布定数系の一般解が知られている下端に集中質量のない自由境界の場合と,一定張力が作用する水平ロープで近似できる十分大きな集中質量を下端に有する固定境界の場合について,解の固有モード展開を用いた分布定数系索のシミュレーションを行った.また,提案手法による固定境界近傍での波動吸収制御と系のエネルギー流れの関係を論じ,境界近傍制御変位は制御に制限を与えることで整定時間を犠牲にするが任意に調整できることを確認した. 振子振れ角波動制御では,多重単振子仮想系について振子番号(位置)を重みとする振れ角を導入した波動伝搬解析解を求め,時間軸インパルス応答関数と制御対象懸垂系最上端振子振れ角との畳み込み積分による支持点横運動加速度制御則を導出した.振れ角制御として支持点横変位加速度を制御するため制御後の支持点の位置は保障されないため,支点位置と支点速度のフィードバック制御を加えた振れ角波動伝搬加速度を制御加速度とする制御法を検討した.フィードバック制御係数の推奨値をシミュレーションにより探索した.フィードバックにより振れ角制御と振子支点の任意位置への移動が同時に実現する制御則を実験検証した.実験結果をシミュレーションと比較し定性的に両者が一致することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
懸垂索横変位波動制御の制御法の開発では,懸垂索の振れ止め制御として差分モデルに基づく固定上端でのインピーダンス整合制御を行う波動制御法に関して,懸垂索分布定数系運動方程式の解析的な波動伝搬解は知られていないため差分波動伝搬近似解を導出した.下端自由境界に付加質量がない場合の境界値問題の一般解(0次第1種ベッセル関数)を用いて差分近似解の分布定数系での制御性を検証した.上端固定・下端付加質量無の自由端,上端固定・下端付加質量有の自由端,上端端固定・下端付加質量有の固定端の差分モデルシミュレーションによって周波数応答にほぼ一致する制御応答を確認した.上端固定・下端付加質量無の自由端の分布定数系シミュレーションによって差分モデルシミュレーションに近い制御応答を確認した.境界近傍制御変位は制御に制限を与えることで整定時間を犠牲にするが任意に調整できることを確認した.これらの検証より索構造機械装置の索波動制御への適用の可能性が確認できた. 振子振れ角波動制御の制御法では,時間軸波動伝搬インパルス応答関数と懸垂系最上端振子振れ角との畳み込み積分による支持点横運動加速度制御則を導出した.支持点位置を制御するために支点位置と支点速度のフィードバック制御を導入し,振れ角波動伝搬加速度制御項にこれらのフィードバック項を付加する支持点加速度制御法を開発した.基礎実験を,3自由度懸垂振子系,2自由度懸垂振子下端に1自由度ロープ質量系を懸垂した3自由度懸垂振子系,ロープ質量系の1自由度振子系を対象として行った.1自由度ロープ質量系制御では制御器で2自由度単振子系の運動方程式をオンラインで演算した.2自由度単振子系が必要となるのは,波動伝搬解が3連続均質多重単振子系を前提に導いたものであるためである.実験結果をシミュレーションと比較し定性的に両者が一致することを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,懸垂索波動制御,振子振れ角波動制御,懸垂索・振子振れ角統合波動制御技術の開発が目的である.懸垂索波動制御は,本年度に制御則の開発がほぼ完了し,次年度に実験検証の予定である.振子振れ角波動制御は,本年度に制御則の開発と基本的な実験検証は完了している.次年度はクレーン装置に適用するための実験装置の改造(荷質量体の巻上げ巻下し機構を追加)と制御アルゴリズムの改修および検証の予定である.懸垂索・振子振れ角統合制御については,東洋大既設の装置が次々年度(最終年度)に使用できないため実証実験に代えて要素実験と統合シミュレーションを行う計画である.東洋大既設装置の使用が不可となることは当該研究課題の申請時点で予想できなかったもので次善の方法としてシミュレーションを援用した要素技術の実験により制御性能を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
懸垂索横変位波動制御に関して,開発した制御則の基本的特性の確認はほぼ完了しているが,実験装置に組み込むための詳細な仕様の確認が完了していない.そのため,当初,購入予定の実験装置部品の仕様が定まらず,本年度購入予定であった部品購入を次年度に繰り延べる必要が生じたため,本年度使用予算額を次年度に繰り越したい.
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次年度使用額の使用計画 |
懸垂索変位波動制御実験装置の要素部品費に充当する.
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