本年度は,クレーン索荷系と制御器内に構築する力学モデル振子系から成る多重懸垂単振子系が,クレーンの巻上げ巻下げに伴って非均質懸垂多重単振子系となることに対して,その非均質性と波動伝搬特性およびフィードバック制御の制振性に与える影響を解析し,巻上げ巻下し動作とトラバース動作の最適な制御系設計法を検討した.解析結果を実験により検証した.クレーン索長によってフィードバック係数の制振効果が大きく変わるが,クレーン索荷系に適用する場合は最大索長を基本に制御器の力学モデルを構築することが有利である.
H26年度は,懸垂索横変位波動制御法の開発と振子振れ角波動制御法の開発および実験的検証を行った.懸垂索横変位波動制御では,差分制御則の導出,差分モデル及び分布定数系モデルによる制御シミュレーションにより,制御則の有効性の検証を行った.振子振れ角波動制御では,多重単振子系について振子番号を重みとする振れ角を導入する波動伝搬解析解を求め,時間軸インパルス応答関数と制御対象懸垂系最上端振子振れ角との畳み込み積分による支持点横運動加速度制御則を導出した.支持点位置を制御するために支点の位置と速度のフィードバック制御を加えた振れ角波動伝搬加速度制御法を開発し,制御則を実験検証した.
H27年度は,振子振れ角波動制御法に関してクレーン索荷系の制振制御特性を検討した.均質2自由度懸垂単振子系を制御器内に力学モデルとして構成し,その波動制御オンライン演算によって,クレーン索荷系に波動伝搬性を支持点加速度として印可する.クレーン索長と力学モデル振子長の比によっての波動伝搬特性が変わるが,多重単振子系で存在する波動伝搬限界について,支持点フィードバック係数を適切に選択することにより索荷系+力学モデル系での波動伝搬特性を根源的に変えることができることが分かった.
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