研究課題/領域番号 |
26420184
|
研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
石濱 正男 神奈川工科大学, 創造工学部, 教授 (20298277)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | タイヤ / 騒音 / 路面 / 入力 / 加振 / 波動 / モデル化 |
研究実績の概要 |
タイヤトレッドを加振して振動エネルギーを与え、タイヤ全体振動と放射騒音の源となる路面上突起のトレッドへの貫入を、ガウス関数という単純な数式でモデル化できることを発見した。このガウス関数近似によって、突起貫入速度への微分演算やフーリエ変換演算を単純化することに成功した。 路面突起をランダムに並んだ加振パルス集合として捉え、その要素である単一突起や突起列によるトレッド表面変形から、タイヤ構造の主要メンバーであるスティールベルトへの応力の分散を非線形構造解析により明らかにした。その結果と非線形有限要素解析を組み合わせた結果、溝の存在によりトレッドゴム層の有効弾性率が低下して、スティールベルトへの入力分布幅が先鋭化し、波動に影響を及ぼすことがわかった。ここまでで、入力モデルの構築はほぼ完成に近づいた。 これらの入力モデルをタイヤ構造内の波動計算に用い、タイヤ表面上を伝播する振動波を時系列で計算した。その結果、入力点近傍ではトレッド上を伝わる波と、いったんサイドウォールへと横に広がって車輪の縁で反射してくる波とが干渉する複雑な波動場となっていることが判明した。入力点から離れたトレッド上では、この二種類の波動の位相差が減り、導波管内に似た波動伝播となっていることがわかった。ここまでで路面突起によるタイヤ構造振動生成のモデル化はほぼ完成に近づいた。 ここまでの研究から、放射騒音、転がり抵抗、水はけ(つまりウェットグリップ)の素性がよいと考えられる次世代タイヤ像が、細幅トレッド・大径・高圧タイヤであることが浮かび上がった。この次世代タイヤの弱点と考えられる乗り心地(目地ショック)を、車両側技術によって克服する可能性を、車両実験により調べた。その結果、サブフレームや防振ゴムによって実現できる可能性をつかんだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目、2年目の研究課題は、路面突起によるタイヤ構造振動への入力モデル構築と、その入力によるタイヤ構造振動応答計算が主体であり、これらについては100%以上の成果が得られている。 しかし、3年目の課題であるタイヤの転がり変形からのエネルギー回生については、まだ文献調査にとどまっているが、先行研究が存在する可能性があることがわかった。今後、これを精査したり、あるいは調査結果を踏まえて方向を変更したりによって、原理的に健康で有用な成果へと導く。
|
今後の研究の推進方策 |
今日の空気入りタイヤ構造での騒音発生メカニズムは、完璧ではないが、相当解明に近づいた。この成果を使えば、製造企業におけるタイヤ改良作業は、従来よりも効率的となる。 したがって、従来構造形式タイヤの改良は、むしろ製造企業においての実施となるように、自動車技術会のタイヤ騒音特設委員会などでのテクノロジートランスファーを行い、大学での研究は「次々世代タイヤ構造」の探索や、車室内でのロードノイズ音質向上技術研究へと発展をさせる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
タイヤの転がり変形からのエネルギー回生についての車両実験を平成28年度に行うこととしたため
|
次年度使用額の使用計画 |
実験車両用燃料費として使用
|