研究課題/領域番号 |
26420187
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山田 啓介 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80456798)
|
研究分担者 |
宇津野 秀夫 関西大学, システム理工学部, 教授 (00362442)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 圧電素子 / 吸音 / 振動制御 / スマート構造 / モード解析 / エネルギーハーヴェスティング |
研究実績の概要 |
交付申請書の内容に沿って説明する. 1. 負剛性付き圧電吸音板(新機構)の検討 平成26年度に実施した,平板と背後剛壁の間に圧電素子を用いた負剛性を挿入する方法では十分な固有振動数の低減を行えなかったため,平成27年度はスペーサを用いて圧電素子の曲げ剛性と平板の曲げ剛性を整合する方法を検討した.その結果,平板の剛性が十分に大きい場合には効果があるが,圧電吸音板のように平板の剛性が低い場合には期待した効果は得られないことが分かった.また,理論解析により,ある値よりも大きな負剛性を付加すると系が不安定になることが分かった.これらの結果を踏まえ,負剛性と多孔質吸音材の組合せの検討は中止にした. 2. 圧電吸音板を用いたエネルギの回生 圧電吸音板を用いて吸音効果を最大化する場合と,回生エネルギを最大化する場合の理論的な検討を行った.前者は回路の最適値を導出済みであったため,後者の最適値を導出した.加振振動数が単一の振動数の場合と,ランダム加振の場合の両方について検討した.この結果は吸音板だけでなく,エネルギーハーヴェスティング全体に有効である. 3. 加振音圧に比例した力を圧電吸音板に加える方法 圧電吸音板の吸音帯域を広げるためには圧電吸音板の見かけの質量と剛性を低減する必要がある.そこで,加振音圧に比例した力を別の圧電素子を用いて印加する方法を検討した.両端を閉じた一次元音響管と,片方が開いており,開口部から音が放射される場合の両方について検討を行った.理論と実験の両面から有効性を検証したが,広帯域化を進めるにしたがって,圧電素子の性能を高める必要があることも分かったため,この点については引き続き次年度に検討予定である. 4. 変位加振を受ける音場のモード解析 圧電制音板の研究では音場と平板,および電気系の連成振動を考える必要がある.その連成振動をモード解析で解析する方法を提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
負剛性付き圧電吸音板に関しては目標としていた周波数まで固有振動数を低減することはできなかったが,理論的に低減できる周波数の限界値が求まり,設計の指針は得た.圧電吸音板を用いたエネルギ回生については,圧電吸音板以外にも使える普遍的な知見を得たため,予定より進捗したと言える.また,加振音圧に比例した力を圧電吸音板に加える方法については,新たな課題が見つかり,現在その解決に取組んでいるところである.連成振動のモード解析については,圧電制音板の研究に用いるという点では平成27年度で完成しており,予定以上の成果である.ある課題はクリアできないことが判明するなど,計画通りの成果が得られなかった課題もあるが,逆に当初の計画以上の成果が得られている課題もあり,総合的にはおおむね順調と評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
加振音圧に比例した力を圧電吸音板に加える方法は,圧電素子の性能を高める方法との組合せを引続き検討する.また,圧電吸音板を用いたエネルギ回生については今後は実験を中心に進める.平成28年度は最終年度であるため,各研究課題の内容を完成させることに重点をおく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理論解析が中心の研究課題については予定より進んでいるが,各課題の実験での検証が予定より遅れているため,物品費を確保するために次年度に繰りこすことにした.
|
次年度使用額の使用計画 |
圧電セラミックスと電子部品,各種平板の購入を予定している.次年度も多くの実験を予定しているため,当初の交付申請書の時点よりもこれらを購入する分量が増える計画である.それ以外では予定通り国際会議に2件参加する.また,全国規模の国内学会にも2件参加予定であり,出張旅費として使用する予定である.
|