研究課題/領域番号 |
26420200
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤井 文武 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30274179)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 皮膚表面筋電位 / 関節角加速度 / モデル同定 / カルマンフィルタ |
研究実績の概要 |
本年度は,当初計画で初年度に実施予定であった,関節の運動に関連する筋肉の皮膚表面筋電位と,当該筋電位信号に対応する筋肉の収縮が引き起こす関節運動の角加速度の間を定量的に関係づける動的モデルの構築に取り組んだ.モデル構築に当たっては,右肘関節の屈曲・伸展運動の角加速度を出力と考え,この発生原因として上腕二頭筋および上腕三頭筋の皮膚表面筋電位信号を入力とする2入力1出力系を考えることとした.モデル構造は,Masuda らの先行研究を参考に,皮膚表面筋電位のMAV処理信号を近似微分したものが加速度を与えると仮定して定めた.パラメータ同定に当たっての出力時系列は,昨年度の本研究で関節角加速度の推定値に基づくアシストスーツ制御系を構築した際に設計した適応カルマンフィルタの推定値を用いることとし,入力の筋電位は個人差の影響を低減するために %MVC 処理をした筋電位時系列を用いたが,筋電位をそのままモデルに与えたものと,定常成分を取り除くため1サンプリングステップの差分を行った上でモデルに加えたものの2とおりを試行した. 被験者には,画面上にアニメーションで表示した模範運動と同調した運動をするように指示し,運動の種類や負荷条件などを変更しながら同定作業を繰り返した.その結果,入力筋電位時系列から推定角加速度時系列を高い精度で推定できることを確認した.また,同一の運動であっても被験者が異なれば平素の筋肉の使い方の違いを原因として観測される筋電位信号に違いがあることが知られているが,同定したモデルのゲインの相違と言う形でそれを定量確認することが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初からの2年間の通算で見れば,着手の順番を変更する必要はあったものの,ほぼ予定どおりの進捗と成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果により,推定関節角加速度を利用した制御系であっても,筋電位をトリガとしてアシストを行うアシストスーツと同程度の応答性を示すようにすることは可能であることが確認できた.一方,力仕事の支援という観点で見れば,アシストの立ち上がりが良いことは必須であるが,それ以降の動作の過渡領域においても必要十分なアシストを加える必要がある.これが過多となれば装着者には意に反した動作となり事故やケガの原因となりうるし,逆に不足であればアシストの効果を実感できない. 今後は,アシスト初期に高い応答性を持ってアシストを加えるための装置の改良に注力するとともに,過渡領域において作業者に満足を与える必要十分なアシストを加えるための負荷推定手法について検討を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は国際会議での発表とその旅費を計上していたが,それを取りやめ,本研究課題の現状までの成果をまとめてインパクトファクターの高いジャーナルへ論文として投稿することにリソースを割いたため,結果として余剰金が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には,学生も含めた国際会議での発表を予定しており,その旅費と参加費の一部として,平成27年度の余剰金を充当する予定である.
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