研究課題/領域番号 |
26420212
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
鳥井 昭宏 愛知工業大学, 工学部, 教授 (70267889)
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研究分担者 |
道木 加絵 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (00350942)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 圧電アクチュエータ / インチワーム |
研究実績の概要 |
インチワーム型多自由度精密位置決め装置の最適化を目的とする。産業機器への応用を目指し外乱に強い,位置保持性能の高い,操作性に優れたインチワーム型多自由度位置決め装置の構造を明らかにする。目標とする移動範囲は200mm四方であり,目標精度は10nmの直線変位とナノラジアン(nrad)の角度変位である。 6個の圧電素子と6個の電磁石を組み合わせたインチワーム型6自由度位置決め装置を製作した。平面内での並進2自由度と回転1自由度,さらに3軸方向の微動とその軸周りの微小角度変位3自由度が可能である。構造はベンゼン環を模倣した六員環構造であり,3個の対称軸を有する。移動表面の表面粗さ,駆動周波数,搭載した負荷の質量による移動性能の違いを明らかにした。構造の対称性から,それぞれの移動方向に関する移動特性は等しいはずであるが,実験では移動量に相違が見られた。インチワームと移動面の間の摩擦によって移動特性が変化することが明らかになった。 3個の圧電素子と3個の電磁石を組み合わせたインチワーム型3自由度位置決め装置を製作した。平面内での並進2自由度と回転1自由度の動作が可能である。インチワームの移動速度は駆動周波数によって決まるが,駆動周波数の最大値は電磁石の時定数によって決まる。電磁石の時定数を考慮して制御周波数を決定した。これにより最大速度が得られた。制御周波数を高くすると電磁石のオンオフ状態と圧電素子の伸縮のタイミングが揃わず,移動速度が低下した。 インチワーム型移動機構の動作の不揃いは,インチワームと移動表面間の摩擦によることが明らかになった。そこで,浮上機構を用いることによって,移動時には摩擦が生じないインチワーム型位置決め機構を製作した。圧電素子への入力電圧・電流・位相差・消費電力,実際の浮上量,圧電素子の動作を測定することによって,浮上状態のセンサレス推定が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧電素子と電磁石を組み合わせた等方性に優れたインチワーム型多自由度位置決め装置を製作した。6個の圧電素子と6個の電磁石を組み合わせたベンゼン環を模倣した六員環構造の6自由度インチワームは,構造的に3個の対称性を有する。それぞれの方向への移動性能を明らかにできた。移動表面の表面粗さ,駆動周波数,搭載した負荷の質量による移動性能の違いを求めた。実験結果より,インチワームと移動面の間の摩擦によって移動特性が変化することが明らかになった。 3個の圧電素子と3個の電磁石を組み合わせた正三角形状の3自由度インチワームを製作した。このインチワームの駆動周波数と移動特性を,電磁石の発生する電磁力に着目して明らかにした。使用した電磁石はコイルの巻き数が大きい。小さい駆動電流であっても大きな電磁力を得るためである。しかし,巻き数が大きいために,自己インダクタンスが大きく,電流のオンオフ時の時定数が大きい。そのため,電磁石の時定数を考慮して制御周波数を決定することにより,最大の移動速度を得ることができた。 移動時には非接触状態となるインチワームを製作した。鉛直振動する圧電素子を用いてスクイーズ膜と呼ばれる空気の膜を発生させ,非接触状態を作ることができた。スクイーズ膜による浮上量を変位センサを用いることなく推定するために,鉛直振動する圧電素子への制御信号と浮上量の関係を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
電磁石の発生する電磁力の観点から,電磁石を流れる電流,時定数に影響を与える自己インダクタンスに基づいて最適な電磁石の形状を実験的に決定する。 6自由度インチワーム,3自由度インチワームのフィードバック制御を行う。これまでの成果によって移動特性が明らかになっているため,PID制御によるフィードバック制御系を構成し,位置決め制御と速度制御を可能にする。圧電素子の振動による浮上量を,センサを用いることなく推定する。振動する圧電素子に与えられる負荷,振動,浮上量,それらと電気信号(電圧,電流,位相差,消費電力)の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発した位置決め装置は圧電素子と電磁石を組み合わせたもので,同時に12個の素子の制御を必要とする。しかし,購入予定の制御装置は,当年度の予算を超えていた。そこで,現有装置を改良することにより対応することにした。制御対象の素子をグループ分けし,各グループを制御することによって,等価的に少ない素子を制御することによって動作を可能にした。概ね期待した結果を得ることができた。そのため,次年度使用額が発生した。 しかしながら,素子間の干渉や柔軟な制御を可能にするためには,各素子を独立に制御する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
多自由度位置決め装置の位置決めを行うための制御装置を購入する。多くの素子を同時に制御するための制御装置を導入する。また,制御結果を評価するための変位センサ,データを獲得するためのデータロガー,性能評価のための機械部品加工費用としての支出を予定している。
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