研究課題/領域番号 |
26420216
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
河村 良行 福岡工業大学, 工学部, 教授 (90167362)
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研究分担者 |
木野 仁 福岡工業大学, 工学部, 教授 (50293816)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 追尾 / 自動制御 / ハンチング / 画像処理 |
研究実績の概要 |
追尾速度の高速化を目的として、既存の天体観測用のステッピングモータードライブの経緯台を、DC モータードライブに改造した。方位角と仰角の主軸を回転させるウオームギアとウオームホイルの接触が適当な接触圧になるように、モーター取り付け架台に機械加工を行った。その結果、回転主軸のバックラッシュを0.01度程度以下に保ちながら、回転摩擦力を軽減させることができた。制御対象は大きな慣性負荷を持つが、定常的な負荷は摩擦力のみである。制御対象が動き出す瞬間は大きな静止摩擦力に打ち勝つトルクを発生する必要があり、また運動の方向を変える時には大きな慣性力を必要とし、これが大きな慣性負荷となり、大きなトルクを必要とする。この様な理由で、本システムは非線形要素を有することが分かった。そのため、システムのステップ応答は極端なハンチングを示した。 追尾対象の位置検出には、既存の画像処理装置(キーエンス社、CV-3000)を用いた。この装置は、種々の便利な機能を持っているが、画像処理に時間を要することがこれまでの経験から分かっていたので、その処理時間を測定するシステムを試作し、これを用いて測定したところ、画像処理に約50ミリ秒を要することが分かった。 この画像処理に長い時間を要することが、システム全体の応答時間が遅くなることの主な原因になっていることがわかったため、制御方法のアルゴリズムを改良することにより、この問題の改善を行った。即ち、みかけの現在の位置情報(実際には50ミリ秒前の位置情報)をそのまま用いるのではなく、一ステップ前の(過去の)位置情報とみかけの現在の位置情報から時間遅れを補正した真の現在の位置情報を一次線形近似で算出し、より確からしい現在の位置情報を得るという手法である。 この方法により、上述のハンチングはほぼ出なくなり、安定な制御が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的である、追尾性能の高速化については、DCモータの導入で制御対象の回転に要するトルクを十分大きな値にすることが出来た。しかしながら、摩擦力と、画像処理の時間遅れに起因する「ハンチング」現象が発生し、これを抑えるのに時間がかかった。実際には「研究実績の概要」で述べた「一次近似」以外にも「さらに1ステップ前の時間における位置情報も合わせて勘案しする「二次近似」、さらにもう1ステップ前の時間の位置情報もさらに合わせて勘案する「三次近似」も開発したが、「一次近似」で得られた以上の結果は得られなかった。近似の精度を上げたつもりが、制御の精度が向上せず返って低下したのは、この制御系が本来的に持っている摩擦力に起因する非線形性のためだと考えている。 この様に、当初予想していていなかった「ハンチング」現象に悩まされたことが、(3)の「やや遅れている」を選んだ理由である。
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今後の研究の推進方策 |
DCモーター電源のコントロールに既存のトランジスターによるリニアアンプを用いていたが、実験システムの安定性の向上を目的として、既存のバイポーラ安定化電源を用いる。最大電圧は36V、最大電流は1.5Aである。電流値はモーターの最大定格電流値よりはるかに低いが、よい結果が出ればさらに電流値の大きい電源を用いる。トランジスタによるリニアアンプは高速性に優れるが、一年間の実験を通して、その高速性はいわば過剰仕様であり、通常の安定化電源を直接制御しても、十分な時間応答を得られる見通しが立った。 制御にはグラフィックソフトであるNational Instruments 社のLab. VIEW(ラボビュー)を、用いる。電源をLab. VIEW でコントロールするドライバーソフトは新たに開発する。 さらに画像処理による位置検出と異なる手法として、光の位置検出可能な光電子増倍管の利用技術を開発し、これを追尾システムに導入し、「山登り法」に基づく追尾手法の開拓を行う。
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