本年度は衛星位置探索方法に関する考察と行うことにより飛翔体追尾システムの性能向上を計った。FITSAT-1の観測経験で得られた知見を整理した結果、観測対象となる衛生の出現時刻及び位置は NORADOのデーターに基づく予測から大きくずれるが、それにはある傾向があることを見出した。即ちズレは方位角方向(衛星の移動方向)に大きく、仰角方向には少ないということが分かった。従って、観測者は予測される仰角で待ち構え、観測視野内に衛星が出現するのを待ち構え、衛星を捉えた瞬間から補足追尾する方法が最も合理的であると考えられる。 以下に、飛行速度の空気抵抗等による減速に起因する出現予測位置と実際の位置のズレの解析の概要をまとめる。衛星の運動方程式から速度が⊿v減速した場合、これによる軌道高度の低下⊿rは2×(r^(3/(2 ))⊿v)/√GM と算出された。但し、rは軌道半径、Gは万有引力丁数、Mは地球の質量である。これに対して、一周回後の飛行方向の変化は⊿xは2π×(r^(3/(2 ))⊿v)/√GMと算出された。その結果N周回後では⊿x=Nπ×⊿rとなり、通常の観測ではNは10以上となるため⊿x≫⊿rとなることが明らかとなった。即ち、研究開始当初予定したように、仰角方向及び方位角方向に均等に望遠鏡を走査するのではなく、方位角方向の走査は最小限に止め、衛星の出現を確実に捉える手法が有効であることが分かった。この解析結果は、NORADOからの情報に基付く衛星位置の発見方法に大きな指針を与え、発見確率の向上に結びけることが期待できる。
|