研究課題/領域番号 |
26420220
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
南谷 靖史 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10323172)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん治療 / がん細胞 / アポトーシス / パルスパワー / パルス電磁波 / 磁気スイッチ / 非線形伝送線路 |
研究実績の概要 |
がん細胞にナノ秒パルスパワーによる高電界を印加することで,がん細胞にアポトーシスを引き起こすことができることが最近の研究で明らかになっている。このような高電界を患部に印加するのに複数のアンテナを身体の周囲に置き,患部に電界を重ね合わせ,高電界をかける方法が提案されている。これまで我々はパルス電磁波発生装置にはLC反転回路を使用してきたが,出力されるバーストパルスの持続時間が短く,細胞に与えられるエネルギーが少ないという問題点があった。そこで磁気スイッチを用いた非線形伝送線路を導入し,持続時間が長くかつ高電圧のバーストパルスを出力できる装置を検討している。この装置は伝送線路上の各コンデンサにより出力されるパルスのタイミングを磁気スイッチで遅らせることで回路に組み合わせたLC段数分のパルスを連続で出力でき,長時間持続可能なバーストパルスを得ることが可能となる回路である。本年度は前年度に引き続き,磁気スイッチ型非線形伝送線路の製作を行った。本年度は実施事項として水を使った回路構成での問題点を早めに明らかにしておくため,来年度の要素技術である高周波化の実施を睨んだ絶縁に水を使った回路構成について検討した。結果絶縁距離を短くして構成することは可能であったが,水の誘電率が高いため寄生のキャパシタンスに注意が必要であった。また,細胞に電界が与える影響の調査では,出芽酵母に周波数3.5MHz,電界強度80kV/cmの印加条件でCaイオンのキレート剤を添加したが活性酸素の発生は多少減ったのみであったことから活性酸素は膜破壊により発生したものが多いことが分かった。しかし,FLICAの反応もなくなったことから,アポトーシスも起こっていることは確実となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,磁気スイッチ型非線形伝送線路の製作を行ったが,本年度では水を使った回路構成での高周波化の問題点を早めに明らかにしておくため,次年度実施事項の水を使った回路構成を試験的に実施した。その結果,水を使った回路での高周波化の問題点である寄生キャパシタンスの影響を明らかにでき,対策を練ることが可能となり,進んだ進捗状況となった。しかしその分,本年度実施予定であった同軸線路での磁気スイッチ型非線形伝送線路の構成が次年度へ持ち越しとなったため,この点では進捗状況は遅れている。したがって全体的な進捗状況はおおむね予定通りと見ることができる。細胞の挙動実験は予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は同軸状線路を構成するが,今年度の結果も踏まえ絶縁物に水以外にカプトンも新たに検討する。カプトンは絶縁耐圧が高く薄いシートで大きな電圧を印加することができるためインダクタンスを小さく,大きなキャパシタンスを作ることが可能となる。細胞への影響調査は周波数を上げて実施する。また電界測定を今年度開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りの支出であったが,次年度の消耗品(ピペット等)の購入に必要な額として次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品(ピペット等)の購入
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