研究課題
がん細胞にナノ秒パルスパワーによる高電界を印加することで,がん細胞にアポトーシスを引き起こすことができることが最近の研究で明らかになっている。このような高電界を患部に印加するのに複数の集束アンテナを身体の周囲に置き,患部で集束電界を重ね合わせ,高電界をかける方法が提案されている。これまで我々はパルス電磁波発生装置にはLC反転回路を使用してきたが,出力されるバーストパルスの持続時間が短く,細胞に与えられるエネルギーが少ないという問題点があった。そこで磁気スイッチを用いた非線形伝送線路を導入し,持続時間が長くかつ高電圧のバーストパルスを出力できる装置を検討している。この装置は伝送線路上の各コンデンサにより出力されるパルスのタイミングを磁気スイッチで遅らせることで回路に組み合わせたLC段数分のパルスを連続で出力でき,長時間持続可能なバーストパルスを得ることが可能となる回路である。本助成期間を通してバーストパルスの発生装置として可飽和リアクトルを用いた非線形伝送線路の開発を行った。Spiceシミュレーションによって磁気スイッチ型が振動振幅の大きなバーストパルスを発生させることができることが分かり,磁気スイッチ型の非線形伝送線路で開発を行った。個別部品のコンデンサを組み合わせる形式で最大電圧8kV,最大周波数50MHzのバーストパルスを発生させることができた。バースト回数は10パルスとしたが,増やすことは可能である。さらに最終年度では同軸状のコンデンサを組み合わせることにより最大電圧15kV,最大周波数130MHzのバーストパルスを発生させることができた。バースト回数は5回まで検証した。この装置を用いがん細胞に印加実験を行い,HeLa細胞にアポトーシスによるDNA断片化が起こっているか調べ,130MHz,50kV/cmの電界強度の5つのバーストパルス列200回印加で断片化を起こせた。
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電気学会プラズマ・パルスパワー・放電研究会
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