本研究では、近い将来に実用化が期待されている10 MW(メガワット)級の風力発電システムに適用可能なマルチレベル変換器、およびマルチレベル変換器の技術を応用した非絶縁形DC-DCコンバータに関して検討を行った。最終年度である本年度は、非絶縁型DC-DCコンバータの研究に注力し、PSCADを用いたコンピュータシミュレーション、および150 Vミニモデルを用いた実験により検討を行った。本研究で検討した非絶縁型DC-DCコンバータは従来の双方向チョッパ(主変換器)に補助変換器を加えることで、双方向チョッパに必要なインダクタンス値を低減できる点に特長がある。しかし、具体的な動作原理や制御法は確立されていない状態であった。 本研究では、始めに補助変換器適用時と非適用時におけるインダクタンス値の比較、セル数の最適化、直流コンデンサ電圧制御法、インダクタ電流制御法に関して検討を行った。その結果、従来型の双方向チョッパと比較し、同一スイッチング周波数適用時においてインダクタンス値を1/50以下に低減できることを明らかにした。また、インダクタ電流のリプル発生量とコストに関して考慮し、セル数最適化に関する検討を行った。次に、補助変換器に使用する直流コンデンサ電圧の制御法に関して検討を行い、適切なフィードバック制御系を構築することで、直流コンデンサ電圧を所望の値に制御できることを明らかにした。コンピュータシミュレーションとミニモデルの結果は定常時・過渡時の両方で一致しており、実験とシミュレーションの有用性・妥当性が確認できた。また、インダクタ電流制御法に関しても検討を行い、適切なゲインに設定することで、高速な電流応答が実現できることを明らかにした。 得られた研究データは、電気学会半導体電力変換研究会、および電気学会全国大会に発表済みであり、今後は国内外の権威ある論文誌への投稿を予定している。
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