熱と光の効果を利用した発電技術の開発を目的とし、800 ℃以下における半導体エミッタからの光支援熱電子放出電流を図った。半導体エミッタとしては、理論的に負の電子親和力のポテンシャルを持つダイヤモンドとSiに注目し、エミッタの熱電子放出特性におけるプラズマ表面処理の効果を評価した。また、X線光電子分光法により得られたエミッタ表面の原子組成や分子構造を併せて検討し、電子放出特性への影響を検討した。 アルゴン/酸素混合ガスプラズマ照射した酸素終端Si(111)面にCsを吸着させたSi面においては、基板温度によりCsの表面被覆率が変わるため仕事関数が増減し、基板温度を400 ℃としたときに放出電流が最大となった。この時のSi基板表面の仕事関数は清浄表面へCsを吸着した場合に比べ、約0.4 eV低減していることも分かった。基板温度上昇によりフェルミ準位とキャリア寿命が変化し、光照射時の放出電流に影響するため、基板温度の最適化が重要となる。また面方位については、Si(111)面よりもSi(100)面の方がCs吸着時の仕事関数が低くなることが理論的に予想されたが、実験ではSi(100)の清浄表面および酸化表面ともにCsの吸着率が低く、Si(111)面よりも低い電子放出電流となった。これは、エミッタ表面およびサブサーフェスにおける酸素だけでなく水素が影響しているためと思われる。また、酸素終端したダイヤモンド膜へCsを吸着させ、熱電子放出電流を測定した結果、基板温度500 ℃で数mA/cm2オーダーの電子放出電流が得られた。これは、酸素終端しない表面にCs供給した時の放出電流と比較し約20倍の電流値であり、0.2 eVの仕事関数差に相当する。Csを供給しない場合の酸素終端ダイヤ膜の電子放出はnA以下であり、Cs供給による仕事関数の低減効果が大きいことを確認した。
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